わが子が「ヤバい」「エグい」「スゴい」といった形容詞を使うようになったら注意が必要だ。中学受験指導のエキスパートである矢野耕平氏は「この手の表現を多用する子ほど、読解問題が苦手な傾向にある」という――。

※本稿は、矢野耕平『わが子に「ヤバい」と言わせない 親の語彙力』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

図書館で本を読む少年
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大人顔負けの難しい文章を読んでいる中学受験生たち

「胃袋が期待の声をあげる」「目をみはる」「悪態をつく」「眉を寄せて黙る」「すごむ」「言葉に詰まる」「唇を噛む」「眉を寄せる」「狼狽うろたえる」「危ぶむ」「軽蔑の眼差しを向ける」「腑抜ける」「感嘆のため息をつく」「称賛の声がれる」「ときめきがよみがえる」「目を見開く」「神妙に面持ち」「覇気はきがない」「強張こわばる」……これらの表現を小学生にもよく理解できるように説明せよ、と言われたら困ってしまう大人が多いのではないか。

これは、2023年度・聖光学院中学校(第1回)の国語入試問題の大問3(坂井希久子『たそがれ大食堂』双葉社)の文章に登場した「心情表現」である。中学受験生である小学校6年生の子どもたちは、これらの表現を制限時間内で瞬時に解釈しつつ、物語文を読み解いていかねばならない。

さて、日本語には数多くの「心情表現」が存在する。わたしは2019年に『13歳からの「気もちを伝える言葉」事典』(メイツ出版)という本を刊行し、小中学生に知ってほしい心情表現を整理して並べたのだが、その総数は600語を超えた。また、1993年に刊行された中村明『感情表現辞典』(東京堂出版)を紐解くと、さまざまな感情を表す単語や熟語が2,278語も収録されている。