相手に「わかりやすい」と納得してもらえるような説明をするにはどうすればいいか。ビジネス書作家の浅田すぐるさんは「人は自分が知っていることをイメージしながら話を聞くと、理解が進みやすい。優れた説明をするには引き出し力、把握力、言い換え力の3つが必要だ」という――。

※本稿は、浅田すぐる『「伝える前」が9割 言いたいことが最短で伝わる!「紙1枚」下書き術』(KADOKAWA)を再編集したものです。

クライアントに進言するビジネスコンサルタント
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新しいことをわかりやすく人に説明できますか?

人は、「既知との照合」ができると「わかった」という感覚が得られる。

これは、いったいどういう意味なのか。

たとえば、第1回記事で思考整理の2つのプロセスについて解説した際、「カレーライス」のたとえ話をしました。確認すると、「①情報を整理する」が「カレー作りにおける材料集め」であり、「②考えをまとめる」は「カレーの調理」に該当するプロセスになります。

私が提唱している「1枚」フレームワークはそのための「レシピ」であり、この調理法=思考整理法に沿って実践すれば、「できるだけ話さないですませたい」本音を尊重しつつも、最小限の言葉で相手に伝わるコミュニケーションを量産できるようになる。

この解説の中で今回フォーカスをあてたいのは、「カレー」の部分です。

「1枚」フレームワークという新たなスキルについて初めて触れる人に、どうやって親近感を抱いてもらうか。あるいは、思考整理という抽象的な概念について、どう伝えれば「わかった」という感覚を見出してもらえるのか。

こうした課題をクリアするカギが、相手がすでに知っていること=既知の概念と接続しながら、未知の新たなメッセージを伝えていくことなのです。

「生成AI」を知らない人に説明してみる

これを私は、『未知との遭遇』という有名な映画になぞらえて、「未知との遭遇は、既知との照合で理解してもらう」とまとめて、自社で開講している社会人向けのスクールで受講者さんに学んでもらっています。

何より、このまとめ方自体が「既知との照合」の活用例です。

たとえ映画を観たことがなかったとしても、「未知との遭遇」という言葉に何となく聞き馴染みがある人は多いので、こうしたフレーズでまとめておいたほうが今回の話を覚えやすくなるのではないでしょうか。「覚えやすい」ということもまた、「わかりやすさ」の源泉の1つです。

相手の「既知」にアクセスしながら、伝えたいメッセージを伝える。

ぜひこれから使いこなしていってほしいのですが、具体的にどうすれば良いのか。

答えは、引き続き「紙1枚」書くだけでOKです。

たとえば以前、主宰する学習コミュニティの受講者さん向けに、「ChatGPTをはじめとする生成AI」について解説する機会がありました。

前提として、これは2023年4月当時の話です。当時はまだ、こうした概念について何も知らない人のほうが大半という状況でした。そこで私は、図表1のような「紙1枚」を、伝える前に作成してみたのです。