不安を抱えた子供に「頑張れ」と言ってはいけない
「しんどい」って言っちゃダメ? ヒナコ(中1)
「しんどい」とすぐに弱音を吐いてしまうヒナコ。父親はその度に、「大人の世界はもっと大変なんだぞ。頑張りなさい」と叱咤激励します。そして毎回、「会社員になると、通勤ラッシュが当たり前で、残業もあって、休みも少なくて……」と、自分の仕事の大変さを滔々と語り始めます。
そんなある日――ヒナコは、学校で「将来の夢」という作文を書きました。そこには、「私は将来に夢を持てません。お父さんが働いているのを見ていると、社会に出たら少しもいいことがあるように思えないからです」と書かれてありました。
「しんどい」とすぐに弱音を吐いてしまうヒナコ。父親はその度に、「大人の世界はもっと大変なんだぞ。頑張りなさい」と叱咤激励します。そして毎回、「会社員になると、通勤ラッシュが当たり前で、残業もあって、休みも少なくて……」と、自分の仕事の大変さを滔々と語り始めます。
そんなある日――ヒナコは、学校で「将来の夢」という作文を書きました。そこには、「私は将来に夢を持てません。お父さんが働いているのを見ていると、社会に出たら少しもいいことがあるように思えないからです」と書かれてありました。
「大人の世界はもっと大変なんだから」も、親が子どもに言いがちな言葉です。「大人の世界は……」という言葉をよく発するのは、私たちが知っている限り、父親が多いようにも思います。
しかし、「子どもの世界」と「大人の世界」は別物です。ヒナコが感じている大変さと、父親が感じている大変さは、同じレベルで語られるべきものではありません。ヒナコの父親は、「頑張りなさい」と言っていますが、子どもが「しんどい」と不安に感じているときに「頑張れ」と言うのは逆効果です。
親が正論、アドバイスを言っても意味がない
親は励ますのではなく、子どもの言葉に耳を傾けるべきです。「どんなことが大変なのか教えて」と言葉をかけて、不安を受け止めてあげましょう。ようやく子どもが不安を語り始めても、正論やアドバイスはNG。そこはじっと我慢で、「オウム返し」に徹しましょう。
子どもの気持ちが落ち着いてきたら、正論やアドバイスをするのではなく、自分が子どもと同じ頃に悩んでいたことなどを語るのがいいでしょう。
「お父さんも同じくらいの年頃に、どうしても学校へ行きたくなくて、学校へ行くふりをして公園で時間をつぶしていたことがあるんだ」などと話すと、「へえ、お父さんもそんなことがあったの!」と子どもの不安はさらに消えていきます。
エピソードは、必ずしも実話である必要はありません。子どもの悩みに合う題材を選んで話してあげるのが、「一枚上手」である親の役割です。
仕事の悩みを子供と共有するのがいい
「大人の世界は……」という言葉は使ってほしくありませんが、その前置きさえなければ、父親が自分の仕事の大変さを語るのは、そんなに悪いことではないと思います。むしろ、「会社でこんなことがあってね」と仕事上の悩みを子どもに話してみましょう。