診断は信じるが予後は信じない

私の前著『がんが自然に治る生き方』が出版されて以来、ジェーンを含む多くの劇的寛解者が、最初に診断を聞いたときに感じた強い恐怖について述べています。それはしばしば、「とにかく早くがんを取り除きたい」という切実な願いです。医師は患者に治療に関する迅速な決定をかすことで、この恐怖をなんの気なしに増大させてしまうのです。

劇的寛解者はこのようなパニックと即断即決のプレッシャーを感じつつ、たとえ数日でも考える時間を医師に求めるだけの力があるとも感じています。劇的寛解者は、この重要な時間を利用して、第二、第三の医師の意見を求めたり、補完代替療法について調べたり、治療の最初のステップを決定するのに十分な情報を得ることができるのです。

劇的寛解者が陥りがちなもう一つの心理的変化は、「診断は信じるが予後は信じない」というものです。彼らはがんの統計が正確であると信じてはいますが、悲惨な統計は信じようとしません。とくに、その統計が多様な病気に対処するための多角的な戦略ではなく、がんを治すための一つの方法しか試していない人たちのものである場合には、なおさらです。

従来の治療法以外の選択肢を広げるために、多くの劇的寛解者はインターネットで調べることからはじめますが、これは恵みでもあり、災いでもあります。

いい面としては、インターネットによって患者は膨大な医療や健康情報を利用できるようになり、医師だけに頼る必要がなくなりました。長期の劇的寛解者の多くは、二十数年前には図書館に行って一冊ずつ調べなければならなかった時代を覚えているでしょう。今ではあらゆる百科事典や医学雑誌の情報が指先一つで手に入り、利用できるようになりました。

劇的寛解者にとって絶対に必要なオンラインリソースの一つがPubMed.govです。アメリカ政府は、世界中でおこなわれたほぼすべての医学研究を、この包括的なウェブサイト(税金で賄われています)に掲載しています。

このサイトでは、がんの種類や治療法ごとに最新の研究を調べることができます。たとえば、「乳がん」や「鍼灸しんきゅう治療とがん」と検索すると、1970年代以降におこなわれた科学的研究に瞬時にアクセスできます。自分の知識を増やすと同時に、医師から相手にされる確率を上げるチャンスでもあるのです。

がん治療に「いい/悪い」はない

近年、がんに対する身体・心・精神のアプローチについて、オンラインで教える提唱者が急増しています。私たちのデータベースであるRadicalRemission.comや、クリス・カー、アニタ・ムアジャーニ、クリス・ウォークといった劇的寛解者たちのオンライン・プラットフォームやソーシャルメディア・グループを含め、世界中の人たちが自身の治癒体験や方法をオンラインで共有しているのです。オンライン・サミットやウェビナーの人気は急上昇し、その視聴回数は数百万回に上ります。

こうしたテクノロジーの進歩により、従来の医療や統合医療、代替医療といった各分野の専門家による最新の研究や理論に安価にアクセスできるようになったため、がん患者にとっては重要な情報源となっています。これは、私たちラディカル・リミッション・プロジェクトにとって喜ばしいことです。

最近のある研究では、テクノロジーによって、患者は自分の健康に対してより積極的になることができると示されています。インターネットのおかげでがん患者が健康に対するさまざまなアプローチ、とくにがん専門医が訓練を受けておらず、知らない可能性のある統合医療や補完医療などのアプローチについて、容易に学べるようになったのは間違いありません。

統合的がん治療を専門とする自然療法医のマーク・ブリッカ医師は、統合的がん治療のパイオニアであるドワイト・マッキー医学博士の下で研修を受けました。統合的がん治療に対する需要が非常に高まっているため、現在新しい患者を受け入れることはめったにありません。

ブリッカ博士は、このような患者の意欲の高まりや、還元主義的な健康観(身体を相互に関連した全体として扱うように訓練された医師ではなく、身体の一つの専門分野や部位のみを扱う訓練を受けた医師)からの脱却が進んでいることに勇気づけられる一方で、懸念すべき傾向についても指摘しています。

「インターネットが普及し、多くの情報が手に入るようになったことで、医療を選択する際に十分な情報を持っている人たちが増えました。しかし、残念ながら多くの人は、がん治療に対して従来の治療法と代替療法との間に白黒をつけ、『いい/悪い』を区別しているように見受けられます。本来は、がん治療に『いい』『悪い』はなく、それぞれの人が置かれた状況に応じて、多かれ少なかれ助けとなる治療法があるにすぎないのに、これは残念なことです」

ケリー・ターナー『がんが自然に治る10の習慣』(プレジデント社)
ケリー・ターナー『がんが自然に治る10の習慣』(プレジデント社)

劇的寛解を経験した人たちは、従来の治療法と代替療法の両方について、混乱させたり、ときには矛盾したインターネットの情報をかき分けていくことが、いかに困難であるかを知っています。劇的寛解者の多くは、まるで「がん入門講座」から「がん大学院」へ、がんの短期集中コースを受講させられたように感じたと言います。

こうした気が遠くなるような気持ちをやわらげるのに役立つのは、治療チームの専門家の数を増やすことです。劇的寛解者にとっては、従来の医師は治療チームの一員にすぎず、唯一のメンバーではありません。なぜなら従来の医師は、人全体を見るのではなく、還元主義的な方法で病気を治療するように訓練されているからです。

そのため、劇的寛解を経験した人たちは、心理療法士や自然療法士、漢方医、整体師などの専門家や治癒へ導く助言者たちを自分の治療チームに加えることがよくあります。

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