朝ドラで生涯独身を貫いたヒロインはいるのか

4位 3世代・100年にわたる母娘の恩讐

満足度の高い連係に拍手喝采「カムカムエヴリバディ」(2021年) 66点

上白石萌音・深津絵里・川栄李奈とヒロイン3人体制で、大正から令和を描く壮大な物語。ジャズとあんことラジオ英会話で繋がってゆく緻密なストーリー。

出典=NHKオンデマンド「カムカムエヴリバディ」
出典=NHKオンデマンド「カムカムエヴリバディ

思わず叫んだほど重なる不運と悲劇に、歯がゆさとやりきれなさを覚えた「安子編(上白石)」、自分を捨てた母親への思いを消化しきれないまま、弱くて脆い男(オダギリジョー)を支える「るい編(深津)」、コメディ調だがすべてのわだかまりが解けていく「ひなた編(川栄)」と緩急のついた運びでまったく飽きさせなかった。

3世代モノが続いたところで、閑話休題。独身のヒロインや子供がいないヒロインはいないのか? ググってみたら、生涯独身を貫いたヒロインは「いちばん星」(1977年、高瀬春奈・五代路子)、「オードリー」(2000年、岡本綾)、「とと姉ちゃん」(2016年、高畑充希)だそう。もちろん、ヒロインが若くて結婚や出産まで描いていない作品もある。「ファイト」(2005年、本仮屋ユイカ)、「瞳」(2008年、榮倉奈々)、「つばさ」(2009年、多部未華子)、「てっぱん」(2010年、瀧本美織)、「おかえりモネ」(2021年、清原果耶)などだ。

また、結婚はしたが、ヒロイン自身は妊娠・出産せず、夫の連れ子の母として生きる作品としては、「こころ」(2003年、中越典子)、「芋たこなんきん」(2006年、藤山直美)など。時代を反映するといっても、朝ドラでは依然として「恋愛→結婚→子育て」が王道である。

あと20年くらいしたら、生涯独身のヒロインの割合も増えるだろうか。個人的にはアセクシュアルのヒロインが登場してもいいと思うんだけど。恋せぬ朝ドラ。ということで、ベスト3へ戻ろう。

このクズ父には本当に呆れた

3位 ほげた(口ごたえ)が得意な頑張り屋

クズ父にたかられ続けた「おちょやん」(2020年) 74点

大阪局制作のいいところ(表現も笑いも直球)も悪いところ(悪ノリコント風)も感じていたのだが、ポイントとして高かったのは「クズ父に絶望」「貧乏との闘い」「女の連帯」「夫の裏切り」、そして「見事なまでの女のプライドと引き際」があったからだ。毎田暖乃と杉咲花の名女優2人が演じたおかげで、モデルとされる喜劇女優・浪花千栄子の生涯にきっちり思いを馳せることができた。

まずクズ父・テルヲ。演じたのはトータス松本。酒浸り&借金まみれで娘を売り飛ばしておきながら、金の無心に訪れては騒ぎを起こす。朝ドラ名物「父と娘の確執」は好物だが、多くは「家父長制を打破する娘の奮闘」だ。前代未聞のクズ父には本当に呆れた。呆れたが、塩対応と諦観を見せた千代のセリフには感動した。

「憎いとか嫌いやとかそんなんとっくに通りすぎて、心の中はなんや妙に冷たい干からびたもんしか残ってへんのや」

肝臓を患ったテルヲの最期を(ナレ死だけど)、ある意味でちゃんと突き放した千代の心情風景は見事だったと思う。ま、死後もやたら写真のテルヲが出てはくるのだが、「親に対する絶望と断絶」は朝ドラではまれなほうではないだろうか。