コンピュータが不要になる未来が訪れる
人工ニューラルネットワークは、前述したようにマッチ箱とビーズのような素朴なものでも作ることができます。しかし、それを使って学習したり推論したりする作業は膨大なものになります。
そして、人工ニューラルネットワークがいかに「説明不能なものの関係を学習できる」機械だとしても、それが機械である以上は、必ず「学習する手順」と「推論する手順」は説明可能でなければいけません。そして、説明可能なものであればどんなものでも扱えるのがコンピュータという自動機械ですから、人工ニューラルネットワークの研究にとっては、コンピュータというのは都合のいい道具なのです。
要するにいま、コンピュータの上で人工ニューラルネットワークが動いているのは、たまたま都合がいい道具があったから、というだけの理由です。今後もっといい道具が登場すればそちらに乗り換えるでしょう。実際、いまのコンピュータとは違う形態のハードウェアという意味で、さまざまな方式のAI専用チップが研究開発されています。
さて、いまでは単にAIと言えば人工ニューラルネットワークを指すようになりました。巷で話題のGPTもMidjourneyもStableDiffusionもすべて、人工ニューラルネットワークです。
人工ニューラルネットワークが可能にしたこと
人工ニューラルネットワークが急速に発展したことで、これまで到底不可能に思えたことが次々と実現しました。
初期の人工ニューラルネットワークは、たとえば単純な信号のパターンを学習できるか、という素朴な問題から始まり、しだいに、郵便ハガキに手書きで書かれた数字を読み取ったり、猫と犬の写真を見分けたり、人間個人を識別するといった、より高度で人間にも難しい問題を次々と解いていきました。
と言っても、この間に50年近い月日が流れています。
2000年代に入ると、人工ニューラルネットワークの研究は飛躍的に加速し、ついに2012年には実用的なレベルまでやってきます。それには次のような要因がありました。