運動はがんの再発や死亡リスクを低減させる

がん患者にとって最も興味深いのは、運動が特定のがんの再発や死亡のリスクを低減させることを示した数多くの研究でしょう。これらの研究では、運動が乳がんや大腸がん、前立腺がん、子宮体がん、卵巣がん、肺がんの死亡リスクを大幅に低下させることがわかっています。そのうちの一つでは、自転車やテニス、ジョギング、水泳などの適度な運動を週3時間以上することにより、前立腺がんの男性の生存率が大幅に改善することがわかったと結論付けています。

別の研究では、乳がんの女性が週に1時間だけ、平均時速2~3マイル(時速約3~5キロメートル)のペースで歩いた場合、身体活動の少ない女性に比べて、乳がんによる死亡リスクが最大49%低下することが示されました。

大腸がん患者を対象とした大規模な研究では、余暇の身体活動(テニス、ゴルフ、自転車、水泳、ガーデニング、早歩き、ダンス、エアロビクス、ジョギングなど)をしている人は、していない人に比べて死亡リスクが31%低く、これは診断前に運動していたかどうかには関係ありませんでした(現在、運動をしておらず、望みがないと思っているかもしれない人々にとって勇気づけられるニュースです)。

これらの研究やそのほかの多くの研究は、がんで死亡する確率を大幅に減らしたいのであれば、理想的には毎日、身体を動かす必要があることを示しています。

運動は身体の免疫システムを活性化させる

これまでの運動とがんに関する研究の大半は、がんサバイバーが再発を防ぐためにできること、がん患者が従来の治療の副作用を軽減するためにできることとして、運動に焦点が当てられてきました。しかし、最近になって、運動が放射線や化学療法などの従来のがん治療に対する反応を直接的に改善する可能性があることを示す証拠が見つかっています。

そのうちの一つに、大腸がんを患ったマウスを6週間にわたって調査した研究があります。片方のマウス群は運動のために回し車に乗せ、一方のマウス群は乗せませんでした。すると、運動したマウスはミトコンドリアが特異的に変化し、腫瘍の成長を遅らせたのに対し、運動しなかったマウスの腫瘍は通常の速度で成長したのです。

運動は腫瘍細胞と戦うために身体の免疫システムを活性化させます。別の研究では、車輪の上を走って運動したマウスは、腫瘍の成長を60%抑え、アドレナリンやナチュラルキラー(NK)細胞、免疫システムの機能を高め、腫瘍の治癒を促進しました。