<噂の女性問題? 1カ月前から動静不明の末に公式発表された「解任」は、最初から「いなかった」工作まで...。周囲をざわつかせる「失脚劇」と厳しい「政治闘争」:ジェームズ・パーマー>
中国対アメリカ
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1カ月前から動静が公表されていなかった中国の秦剛(チン・カン)外相が、7月25日に解任された。

駐米大使だった秦は昨年12月に外相に就任したばかりだった。後任には前の外相だった王毅政治局委員が就いたが、一時的なつなぎ役とみられる。

秦は今後、閑職に追いやられる可能性もある。遠慮のない物言いで知られた外務省報道官の趙立堅(チャオ・リーチエン)も、1月に理由不明のまま異動させられた。

しかし秦の場合は、はるかに深刻な状況に直面しているかもしれない。中国外務省は解任を発表した当日のうちに、公式サイトから秦に関する情報を全て削除した。今年上半期の外務省の記録は、副外相らの活動一覧に差し替えられた。

外務省の定例会見では秦の動静に質問が集中したが、回答は曖昧なものばかりで、その質疑自体がサイトの会見記録に掲載されなかった。

秦が「双規」の対象になった可能性もある。これは、忠誠が疑われる共産党員を取り調べる超法規的なシステムのこと。その場合、秦は外部から完全に連絡の取れない状況に置かれている。

秦のような重要人物を突然解任するのは、賢明な判断ではないだろう。中国は諸外国に対して、自国の政府高官はいつ姿を消すか分からないと知らせただけでなく、政府は彼らを最初から「いなかった」ことにする工作まで行うと思わせてしまった。

秦が短い在任中に諸外国と交わした協議や合意は、今では何の意味も持たない。

では秦は何をしたのか。女性問題が噂されているが、それだけで解任ということはないだろう。現時点では健康上の理由も排除してよさそうだ。

そうなると可能性が高いのは、アメリカにいたときに現地の諜報機関に情報を提供した疑いが持たれたことだ。それが解任の理由なら、米中関係はさらに悪化する。