昭和の「上意下達」「やばい会社」の悪臭・腐臭

「組織的ということはないと思います。個々の工場長が指示してやったんじゃないか」
「(経営層の関与は)全くない」

さらに、現場の社員を告訴することに言及し、「器物損壊罪に当たる。当然、犯罪ですから、罪を償ってもらわないといけないと思う」「社員もやっていいことと悪いことがありますよね。不正を働いた人間はそれぐらいの償いはしてもらいたい」などと、「自分は知らないし、責任もない。悪いのは現場」と言わんばかりの発言を連発し、聞き手の不快感を誘ったのです。

そういった他責志向の一方で、パワハラの張本人ではないかと言われている息子の宏一前副社長(35)については、「一生懸命確かにやって、なんとか会社業績を上げようと動いているのはよくわかってました。それが行き過ぎになったのか、結構、理詰めで話をしますんで、それがプレッシャーになったんだなと、今となっては感じておりますけれど」などとかばい、露骨な身内びいきで顰蹙を買いました。

また、カリスマ社長らしい、放言・珍言・迷言も数多く飛び出しました。

「ゴルフボールで傷つけるとは、ゴルフを愛する人に対する冒涜ぼうとく」と言ったかと言えば、「メディアの力ってのはすごいな。影響力は半端じゃないな」と苦笑い。

一方で、自らが退任した後、「新経営陣が思う存分やってもらって、お客さんに喜ばれて、その結果として、利益が出るようであれば、株主としてうれしい」「(会社と社長の思想は受け入れない社員はやめろ、という方針について)遊びに行くなら気心の知れた人間と、仲のいい友達と遊びに行った方が楽しいじゃないですか。その延長線みたいな感じで。会社の方針が前を行こうっていって、俺はもう前をいかないといっては、これはもう経営になりませんので」というKY発言で、聞く人をドン引きさせたのです

その上、会見運営も異例ずくめでした。

例えば、会見の司会を行ったのは、危機管理PR会社の男性だったこと。そもそも、この規模の会社で正式な広報担当者が不在のような状態で、全くの情報発信を行ってこなかったこと自体が異常ですが、こんな時に、社内に司会ひとつする人材もいないのか、との疑問が湧いてきます。

さらに、幹部ら会見者を4人並べて、その役割分担もわからないまま、進行を進め、社長の発言を遮って他の人間が答える、音声が聞き取りづらいなど、違和感を覚える場面も多く見られました。

ビッグモーターの不祥事に多くの国民が怒りを感じるのは、その事案の悪質性ゆえだけではありません。この会社に充満する、昭和の「上意下達」「やばい会社」の悪臭・腐臭に強烈な生理的嫌悪感を覚えるからでしょう。

岡本純子『世界最高の伝え方』(東洋経済新報社)
岡本純子『世界最高の伝え方』(東洋経済新報社)

「(社員を頻繁に降格させる措置について)ちょっと一歩下がって全体をみてもらって、それで人間は成長するんですね。すぐ敗者復活。その繰り返しで、一つの社員教育の一環と思ってやってましたので。それがそのまま、今回の頻繁(な降格)といわれてますけれども、復活した人間も同じくらいおりますので」

といった精神論を振りかざす。

私は、リーダーの家庭教師として、日本の社長や役員の家庭教師として話し方の指導をし、拙著『世界最高の伝え方』(東洋経済新報社)を上梓したばかりですが、ビッグモーターの会見はもはや「世界最悪の伝え方」と断じるほかありません。