2年分を常に持ち歩き、折にふれて過去の記録を読み返している。活躍する機会は多く、「見学記」をまとめるときも、この日記が大いに役立つそうだ。
生活の中では、時間軸のほかに、量的にモノを見ることも重視している。「よく聞く『東京ドーム何杯分』という喩えはナンセンス。東京ドームの容積を知っている人はほとんどいませんからね。それよりも、歩幅(身長の約半分)など、自分なりの物差しを使って数を把握する訓練をしたほうがいい」と力を込める。
数値で物事を把握することの重要性は小宮さんも指摘している。ビジネスで成功するためには、目標を具体化することが必要となる。磨くべきは数字力。そこで自身が企画した「小宮一慶手帳」には、気になる数字を書き込んだり、経済指標を定点観測する欄を設けている。
自分の手帳には、国民健康保険の加入者数、家計の現預金残高(6月末に、初の800兆円超え)など、関心を持った数字を、その都度メモしている。
「仕事柄、僕はマクロ経済の数字に興味がありますが、読者の皆さんは、勤めている会社の売り上げなど、自分の仕事に関連する数字をきちんと把握することからはじめたほうがいい。医療関係者なら高齢化率とかね。そしてそれを定点観測して書き出す。この作業が大切なんですよ。ちょっとした努力の積み重ねが、5年、10年経つと大きな差になるんです」
千里の道も一歩から。今回紹介した達人のノート術も、「なるほど……」と“わかったつもり”になっただけでは意味がない。自分のものとして使いこなすためには、具体的な一歩を踏み出すことが肝心だ。
キーワードを意識してメモを取るのもよし、日記をつけるのもよし。ただし「何のためにそれをするのか」という目的は、忘れずにいたいものである。
※すべて雑誌掲載当時