「競争」は資本主義の動力源だが…

①「共生」
共生の対立概念は「競争」だが、競争こそ資本主義の動力源である。資本主義は新たな市場(フロンティア)を巡る競争を促し、勝者を主体に拡大再生産を続けていく効率的な仕組みだ。一方、「共生」は、競争よりもお互いが助け合って生き延びていく。それによって全体として持続可能な世界を保っていく。成長の限界を感じる時代でもある。「共生」は、限られた資源を分け合って生きていく上で重要だろう。

②「主客未分」
対立概念は「主客分離」だ。これは相手と自分を分けて考え、主観を排して冷徹に対象物の真価を評価する。主客の分離はデカルト以来の近代哲学の基本で、主観を排した客観性は科学発展の重要な要素だった。これに対して、「主客未分」は、主客は実はどこかでつながり、時には主客が入れ替わって主客は合一しているという視点から物事を見る。だから勝ち組も負け組もなく、全ては刹那の相対的な差異でしかなくなり競争は共生に転じる。

行き過ぎた分業は専門バカを生み出す

③「ホーリズム」
これは「主客未分」の延長に当然に出てくる概念だが、事象を要素に分けずにひとつのものとして全体感をもって捉える。これまでの「主客分離」では「要素還元」主義のもとで主客を分離し、客観的な視点から複雑な事象を要素分解して解析した。人間ドックも裁判も科学研究もすべてこれだった。おかげで科学も経済も発達した。アダム・スミスが言う分業による協業で生産性も上がった。しかし、切り刻み過ぎると全体感を見失う。工場などでの人間疎外やホワイトカラーの専門バカを生み出してしまった。だから全体を丸ごととして捉え直すのである。

④「対話」
主客を分離する場合、自分は観察対象から一定の距離を置き、また自ら働きかけずに対象を外から理解する。それに対し、ホーリズムや主客未分では、むしろ積極的に相手と「対話」する。全てのものはつながり作用し合っていると考えるからである。そして、こうした考え方の延長線上には、ものの本質は「主」にも「客」にもなく、両者の「関係性」の中に宿るという世界観が生まれる。

【図表2】新知性は、すでに東洋の識者が書いている
図表=筆者作成