2カ月の間に中堅銀行3行が経営破綻

最近、米国で預金に対する不安が急速に高まっている。その背景には、約2カ月の間に3行の中堅銀行が破綻したことがある。3月初旬以降、シルバーゲート銀行、シリコンバレー銀行、シグネチャー銀行が相次いで破綻した。また、5月に入ると、資産規模で全米14位のファーストリパブリック銀行も破綻した。

2023年4月20日、ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院で、米中経済関係について講演するジャネット・イエレン米財務長官。
写真=EPA/時事通信フォト
2023年4月20日、ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院で、米中経済関係について講演するジャネット・イエレン米財務長官。

それとは対照的に、3月までのデータではわが国の預金は増えている。米国と異なり、わが国では預金に対する安心感があるということだ。わが国の場合、2002年以降の不良債権処理によって、金融システム全体で体質は健全化された。それに加えて、わが国の金融機関は国債取引や、個人、法人向けの融資によって相応の利ザヤを稼いできた経緯がある。

ただ、足元でも、米国では経営不安が取り沙汰される中堅銀行が増えている。今後、SNSを介して預金への不安心理は急速に高まり、さらなる預金引き出しが急速に進むことが懸念される。それが現実となれば、米国の金融システムは1980年代のようにかなり不安定な局面を迎える可能性もある。わが国でも、預金保険制度を十分に理解しておく必要があるだろう。

預金不安はリーマンショック時を上回っている

5月4日、米国の調査会社であるギャラップは、「米国民の約半分が銀行に預けたお金を心配している」と題したリポートを発表した。リポートには、ギャラップが実施した世論調査の結果が記されている。

当該の調査は、シリコンバレー銀行とシグネチャー銀行が破綻した後の4月3日から25日に実施された。“銀行などに預けているお金の安全性についてどの程度心配しているか”との質問にして、“非常に心配している(Very worried)”は19%、“少し心配(Moderately worried)は29%”だった。“あまり心配はしていない(Not too worried)”は30%、“まったく心配していない(Not worried at all)”は20%だ。なお無回答者は集計から除外されている。

全体として預金への不安を抱く人は48%に達している。この水準はリーマンショック直後のギャラップの調査結果(45%)を上回っている。