国内投資(名目設備投資額)が100兆円を超えたのは、バブル経済だった1991年度の1回だけ。ところが2027年度に再び115兆円を超えることを目標とする民間の動きが出ています。投資環境がそろっているという意味では、まさに今がチャンスなんです。

日本が出遅れたら、見捨てられる可能性がある

国内回帰が進みつつあるとはいえ、企業が活動しやすい環境だけでなく、魅力的な市場がなければ企業は海外に行ってしまいます。日本が他国に比べて魅力的な投資先であることが必要です。

日本も米国やEUのような大規模な国内投資喚起策を打たないと、特にグローバル化できる力を持っている企業には見捨てられてしまいます。

日本が安くなっている、諸条件がそろっている今こそが最大のチャンスであり、同時に最後のチャンスでもあると、そう思っているんです。ここで企業にしっかり国内投資や賃上げをしてもらう、国はそれに必要な環境や原資を確保できるよう対策を打つ、これが不可欠だと考えています。

飯田祐二経済産業政策局長
撮影=遠藤素子

日本には大きなポテンシャルがある

――今後の日本の成長エンジンはどの分野でしょうか。

半導体や蓄電池といった分野に加えて、脱炭素社会と経済成長の両立をめざす「グリーントランスフォーメーション」(GX)が成長エンジンのひとつになると思っています。今後10年間官民あわせて総額150兆円を超える投資を実現することを目指し、自動車や鉄鋼、化学、再生可能エネルギーなど22の分野で工程表をまとめています。

気候変動対策として米国ではインフレ削減法において10年間で約3690億ドル(約50兆円)の国による投資支援を、EUは10年間で官民あわせて1兆ユーロ(約142兆円)の投資実現を表明しています。日本は両者に比べて遜色のない規模になっています。

GX実現に必要な技術は日本にたくさん眠っています。特に化学や機械、自動車などのメーカーには大きなポテンシャルがあると期待しています。GXはコストも時間もかかりますし、すぐに結果が出るわけではありません。民間企業だけでは難しいこの分野に市場をつくり、投資を活性化させるのが私たちの役割です。企業に任せきりにするのではなく政策を通して後押ししていく考えです。

また、経産省では「サステナビリティトランスフォーメーション」(SX)を進めています。長期的かつ持続的な企業価値の創造に取り組んでいる企業を選定する「SX銘柄」というものもつくります。投資家にこの部分に目を向けてもらって、市場のプレッシャーをもって多くの企業にSX経営を取り入れてもらおうということですね。