いわゆる「ホワイト企業」に入社すれば将来は安泰、というのは本当か。近著『29歳の教科書』が「上司や先輩が教えてくれない20代30代ビジネスパーソンの生き方」を教えてくれると話題のクロスリバー代表・越川慎司さんは「若手社員の中には、スキルを磨いたり、経験を積んだりする機会が奪われて“がっかり”してモチベーションを下げている人も多いのです」という──。(第3回/全5回)

ホワイト企業は本当に「理想的」な会社なのか

「ホワイト企業」と呼ばれる企業があります。過労や長時間労働がなく、労働時間が適切に管理されている企業で、福利厚生が整っており、有給休暇が取得しやすく、研修制度が整っているとされています。

毎年春には大量の若者が就職して社会に出ますが、入社早々、徹夜して汗水垂らしながら仕事をするような状況は避けたいものです。しかも給料が変わらずに、休暇がたくさん取れるのであれば願ったり叶ったり……。

ところで、労働環境が良いことは100%「バラ色」であって、デメリットはいっさいないのでしょうか?

人それぞれ価値観があると思うのですが、必ずしも「労働時間が短い=幸せ」という単純な話ではないことが、クロスリバーがホワイト企業に入社した新人を対象に行った匿名アンケートから浮き彫りになりました。

オフィスで困惑している女性
写真=iStock.com/metamorworks
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残念な理由①:仕事が途中でも帰らされる

実際にホワイト企業を目指して入社した新人28人にヒアリングしたところ、「(入社して)がっかりした」と答える人が68%(19人)もいたのです。ため息をつきながら答える人も多数いました。

想定したよりもかなり多く、そこで、その理由についてもヒアリングしました。すると、共通する2つの原因がわかったのです。

2019年から大企業、そして2020年から中小企業を対象に、時間外労働の上限が設定されました。建設業や配送業など特定業種は経過措置が取られ、2024年から対象になります。いわゆる「残業規制」が全業種で行われるのです。

「労働時間は減らすが、売り上げを減らすわけにはいかない」と経営陣は躍起やっきになり、ITツールを導入して効率化を進めたり、裁量労働制やプロフェッショナル勤務制度などの人事制度を変えたりするなどして乗り切ろうとします。

しかしながら、現場での仕事の進め方は同じ。仕方なく、管理職が部下の残業を肩代わりしたり、自宅での隠れ残業を黙認したりしています。

このような状況で、新人も残業は許されません。主力の30代・40代の残業を減らすと売り上げ減少に直結しますが、20代の若手社員の残業削減は「影響が少ない」と考えている管理職が少なくありません。

そこで、仕事が終わっていないのに、頭ごなしに「早く帰れ」と指示し、若手は自宅に持ち帰ってやるか、翌朝に早く出社して処理するしかないというのです。