残業が少ないホワイト企業を探して入社したのに、「残業できない」と訴える若手は矛盾に満ちていると思えるかもしれません。しかし、入社してからわかることもあります。結果としてかえって重要プロジェクトに参画しにくくなる事実を、彼らは入社したあとに知ったのです。

とはいえ、「残業すること」がスキルを伸ばしたり、重要プロジェクトに参画したりするための“前提”になってはならない、とも思います。

「ゲーム」の条件が変わった

私が20代のころは寝食を惜しんで働きました。日曜日に1週間分のシャツを持ち込んで会社に寝泊まりしていたときもあります。

その当時は、さまざまな仕事を任されて充実していました。ほかでは得られない業務スキルや経験を得ることができ、働きがいも感じていました。

しかし、そうした長時間労働が続いた先に待っていたのは、心と体を壊しての「戦線離脱」でした。限られた時間の中で成果を出し続ける働き方をしないと、長く働くことはできないと実感しました。

新しいルールと書かれたカードをこちらに見せる男性の手元
写真=iStock.com/Andranik Hakobyan
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ですから、労働時間になんら制約なく、思う存分働きたいという若手社員には賛同できません。一度でも身体を壊すと復帰が難しいのです。

そこで、相談に来る若手社員には「限られた時間の中で成果を残すという条件のゲームに変わったのだ」と伝えるようにしています。

58%が残業削減を目的とした働き方改革には反対

クロスリバーでは、2021年4月に「残業意識調査」を実施しました。7万9000人のビジネスパーソンを対象に、「残業削減を目指した働き方改革に賛成ですか」と聞き、匿名で「Yes」「No」を答えてもらいました。

すると、驚くべきことに「残業削減を目指した働き方改革に反対」という人が58%もいたのです。

これは必ずしも「残業したい」ということではなく、そもそも仕事が終わらないとか、目の前の仕事を片付けることに終始してしまい、スキルアップの時間を取れないとか、学ぶ時間がない、という人が大勢いました。

20代の若手社員だけ取り出すと、「むしろ残業をしたい」という人は41%もいたのです。

最初はてっきり残業代を期待しているのかと思いました。しかし調査をさらに掘り下げる形で、追加調査を行ったところ、そうではなく、「一人前の社会人になるために、20代の間にしっかり学びたい」と希望している人が多いことがわかりました。

企業が気づいていないこと

残業したい理由を自由記入で回答してもらったところ、第3位は「そもそも仕事が終わらないから」という想定通りの回答となりました。第2位は「残業代が欲しいから」と正直に答えてくれました。

予想外に1位であったのは「スキルを磨きたいから」だったのです。

1人前のビジネスパーソンになるために、仕事を通じて経験を積み重ねたり、研修を受けてビジネススキルを高めたりしたい、というのです。