健康にいい、悪いといわれる情報とはどう向き合うべきか。医師の和田秀樹さんは「タバコ、高血圧を健康によくないと常識のように捉えるのは間違っている。高齢になればなるほど治療の個人差は大きくなる」という――。
※本稿は、和田秀樹『70歳からは大学病院に行ってはいけない』(宝島社新書)の一部を再編集したものです。
タバコを吸っても100歳まで生きる人とそうでない人
患者本人の言い分にきちんと耳を傾けることと同じくらい、いい医師を見分けるうえで大切なポイントが、人間には個人差というものがあるということを理解しているかどうかという点です。
個人差があるなんて当たり前じゃないかと思うかもしれません。ところが、日本の大学病院の教授たちの多くは、エビデンスを軽視するとともに、人間には個人差がないということを信じている特殊な人たちなのです。
タバコは健康によくない、炭水化物の多い食事は血糖値を上げてしまう、といったことが常識のように言われていますが、当然ながら個人差があります。タバコを吸っても100歳まで生きる人もいれば、酒もタバコもやらないのに、働き盛りの時に肺がんで亡くなる人もいます。
当たり前のことですが、統計によっていかなるデータが出たとしても、個人にそれがそのまま当てはまるわけではありません。個人差があるからです。
たとえば、教育心理学などでは、褒めて育てたほうがいいか、叱って育てたほうがいいか、ということが永遠のテーマのようにして繰り返し論じられています。
そして実験してみた結果、たとえば、褒めたほうが伸びたという子が7割いて、叱ったほうが点数が上がったという子が3割いたとします。そうなると、統計的には褒めたほうがいい、という話になります。