目的のない節約貯金は思考停止と同じ

【穣一】「えっ、全部!? でも、同期の中には、もう300万円も貯めたっていうヤツもいたりして、ちょっと焦りますよ。まだ就職してから3年なのに」

【パパ】「どうかなあ。そういえば雑誌やウェブのコラムなんかでも、『20代で2000万円貯めた人の習慣』とか『年収300万円でも10年で1000万円貯める方法』といった特集が組まれることがあってそれなりに人気らしいけど、貯金ってそんな大切なのかねえ」

【穣一】「何かあったときの備えは必要ですよね」

【パパ】「まあね、たしかにゼロじゃ余裕がなくなるだろう。病気になって働けなくなることもあるし、突然会社が倒産とかリストラとかいう可能性もある。だから貯金はあったほうが望ましい。でも、特に理由もなく貯金そのものが目的になってしまうと、それはただの思考停止だ」

日本の銀行帳に10万円、現金が記録されている
写真=iStock.com/mapo
※写真はイメージです

安心と引き換えにつまらない人生を送るリスク

【慶太】「思考停止って、どういうこと?」

【パパ】「たとえば、野菜を食べることは大切だけど、それは何のためかというと、そもそも健康維持が目的のはずだろう? なのに、健康にいいからといって野菜ばかりを食べていれば、栄養バランスが崩れる。つまり『その行為の本来の目的は何か』に立ち返って考えることが大切なんだ」

【穣一】「本来の目的、ですか」

【パパ】「安心を得ることと引き換えに、もっと楽しい経験をすることなく人生を終了してしまうリスクについて、もっと敏感になっておかなきゃ。日本人は平均して、約3000万円の貯金を残して死ぬらしい」

【慶太】「え、そんなに!」