年度終わりの3月は月別の離婚件数が最も多い。夫婦問題研究家でパートナーシップアドバイザーの岡野あつこさんは「3月で区切りをつけようとしたことで、かえってその後に離婚とは別の新たなトラブルを抱えてしまうケースが多い」という。3つの事例を紹介しよう――。
離婚届
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「熟年夫婦」と「3月離婚」の関係

「離婚する夫婦5組のうち、1組は熟年離婚」といわれるくらい、同居期間が20年以上になる熟年夫婦が離婚するケースは年々、増加傾向にある。そうした熟年組を含め月別の離婚件数が一年で最も多いのは3月だ。

今回は、3月に離婚をした熟年夫婦の「その後」を紹介しよう。離婚して夫婦の関係は解消されたが、3月というタイミングが思わぬダメージをもたらした3つの事例に共通するのは「子ども」というキーワードだ。

CASE1 夫婦の修羅場がトラウマになった娘

「私たちの離婚のせいで、娘の価値観を変えてしまった」と嘆くY也さん(55歳)は、29歳で会社の同僚と結婚し、二人の子どもに恵まれた。49歳で熟年離婚にいたった理由はY也さんの不倫が妻に発覚したことだった。

「6年にわたって関係を続けていた不倫相手が、私がなかなか妻と別れないことに業を煮やした。そして、そのことがきっかけで私たちの夫婦生活も崩壊した」

当時、30代後半になったY也さんの不倫相手は「私だって結婚したいし、子どももほしい。ただ待っていても奥さんと別れてくれないなら、私にだって考えがある」と、Y也さんの妻に対し、挑むように嫌がらせの行動をはじめたのだった。

「あろうことか不倫旅行に行った時にスマホで撮った二人の写真をわざわざプリントして僕の自宅に妻宛てで郵送してきたり、私のスーツのポケットに自分の使用済みの下着をこっそり仕込んでおいてそれをクリーニングに出す妻を驚かせたりと、とにかく激しい嫌がらせの連続で妻はすっかり精神的に参ってしまった。当然、二人の子どもたちにも僕の不倫のゴタゴタの話は伝わり、家庭は修羅場と化しました」

結局、Y也さんは不倫相手と別れたものの、夫婦の信頼は失墜し、20年という夫婦生活にピリオドを打つことになった。「ちょうど上の子は地方の大学に、下の子は高校にそれぞれ進学するタイミングだったので『3月中に決着をつけよう』という話し合いで妻とは合意した」

ところが、そこからが大変だったという。

「3月中というタイムリミットには圧倒的に時間が不足していたこともあり、やるべきことや決めなければならないことで妻も私も相当追い詰められた。その結果、顔を合わせれば大声で罵り合い、家具や食器に八つ当たりしては二人の子どもを泣かせるのが日常になった」

そうした劣悪な家庭環境に置かれた子どもは災難としかいいようがない。

「とくに、多感な時期だった下の子の心を深く傷つけたようで、『私は一生、誰とも付き合わないし結婚もしない。パパとママみたいには絶対になりたくないから』と頑なに人間関係を拒むようになってしまいました。もともとは私の不徳の致すところに端を発した話ですが、離婚のタイミングは3月にこだわらなくてもよかったのかもしれません……」