脱炭素化と水素利用で世界をリードしようと腐心するEU

次世代エネルギーの一つとして、水素の利用に世界的な注目が集まって久しい。

水素を燃料として使う場合、その最大のメリットは、温室効果ガスである二酸化炭素(CO2)を排出しないことにある。水素を燃やしても、生じるのは水である。そのため、いわゆる脱炭素化の観点から、水素は極めて有望なエネルギーとなるわけだ。

水素エネルギー製造パイプライン
写真=iStock.com/audioundwerbung
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したがって、脱炭素化で世界をリードしようと腐心するEUにとっては、水素の利用の推進もまた重要な政策的課題となっている。

水素は「二次エネルギー」(利用のために加工の過程が必要なエネルギー)であり、基本的に水を電気で分解することで生産される。そのための電気を再エネで賄えば、実にグリーンな水素が出来上がる。

周知のとおりEUは、脱炭素化の観点から再エネによる発電を重視している。再エネによって発電を行い、その電力で水を分解して水素を生産できるなら、脱炭素化という観点からは極めて理想的な電力の発電から消費への流れが構築される。

天然ガスに代わる打ってつけの次世代エネルギー

そのためEUは、あくまで再エネによって発電した電力による水素の生産を、普及の基本に据えている。

加えてEUの場合、ロシア産の化石燃料に対する依存の軽減、つまり「脱ロシア化」を図ろうとしていることも、水素の利用に向けた動きに弾みをつけたといっていいだろう。

金融・経済制裁に反発するロシアがヨーロッパ向けの天然ガスの供給を絞り込んだことは、かえってEUの脱ロシア化に向けた意思を強固なものにしたと考えられる。