「わからないけど何か面白い」でいい
「私は責任者なのでイベントの最中はいちばん後ろで立ってお話をうかがっているんですが、全然わからないなりに、数学の面白さが伝わってくるんです。講義をされる先生の話術が巧みなせいもあると思うんですが」
布川さんはいま、その数学の「わからないけれど何か面白い」という魅力をもっと多くの人に届けたいと考えている。布川さん自身も、数学の専門誌からエッセイを依頼されたし、愛好家たちが集う大規模な数学イベントに登壇して、自身のことや、数学書コーナーについて話をした。
「ほんと、私みたいな素人が出て誰得なんだろうと思ったんですが」
布川さんは照れ笑いをする。
「私が伝えられる数学の面白さは氷山の一角にしか過ぎないけれど、今は漫画や小説など、素人でも数学の世界に入りやすいさまざまなジャンルの本が出ています。たまに政治家の発言で『数学のこんなジャンルは要らない』という発言がニュースになりますけれど、少しでも知っていれば、数学がどんなに生活と結びついているのか、わかるはずです」
「なんだかわからないけれど面白そうだ」。新しい教養や趣味の一歩はそうして始まるのではないだろうか。