なぜ20代からのキャリア教育が必要か

現状では、日本企業の経営層は年配の男性で占められていることがほとんどです。こうした同質性を変えていくための手段として、白河さんは「初めから女性を採用・登用する割合を決めておくクオータ制や、ステレオタイプな男女観を取り除くためのアンコンシャス・バイアス研修の導入を検討しては」と語ります。

特にステレオタイプには有害なものもあり、たとえば「子育ては女性の役割」という考え方が「だから女性は登用しないようにしよう」という差別行動につながっていくことも。女性だけでなく男性にも、「男は家族を養うべき」という考え方がプレッシャーになって苦しむケースが見られるそうです。

「無意識の偏見は誰もが持っているもの。自分の偏見に気づけば、それが行動を変えるきっかけになります。誰もが自分らしく生き、自分らしく働くために、企業の方々には有害なステレオタイプをなくす取り組みをぜひ始めていただきたいと思います」

自社を時代遅れの同質的な組織にしないためにも、ダイバーシティの推進は必須。白河さんの講演は、その必要性や達成までの道筋をわかりやすく解説するもので、参加者も新しい視点を得ることができたようでした。

続いて、木下明子編集長が「なぜ20代からのキャリア教育が必要なのか?」をテーマに講演。大企業の平均では、管理職予備軍である20代女性社員は約31%もいるのに、実際に管理職になるのは約6.8%であると指摘し、「女性管理職が増えないのは“リアルな管理職候補”が増えないから」と語りました。

多くの企業はさまざまな施策を打っており、30代を中心とする女性社員を管理職候補に育成しようとしています。プレジデント ウーマン編集部の調査でも、女性の昇進意欲は男性に比べて決して低くはありません。ただ、女性の昇進意欲がピークを迎えるのは50代という調査結果も。

ここで木下編集長は、女性社員の約2割が入社2年目で昇進意欲を失っていること、管理職になりたくない理由としてプライベートとの両立の困難さが挙がっていることなどをデータで示し、「女性は男性よりもライフイベントの責任を重く捉えている」と解説しました。

「こうした調査結果を見ると、管理職候補を増やすにあたって、ライフイベント期に入る30代からキャリア教育を行うのでは無理があります。20代を業務遂行者として過ごしてきた女性に対し、負荷がかかるライフイベント期にいきなり研修や施策を打っても実効性は低いでしょう。そこで私たちは、20代にこそキャリア教育が必要だという結論に至りました」

木下 明子編集長
撮影=小林久井(近藤スタジオ)