子どもの野球人口は激減

40歳以上の大人が小学生の頃は、夜になればどこの家庭でもプロ野球のナイター中継があり、父親はそれを見ながらビールを飲むのが「日常」だった。野球は取り立てて意識しなくても子どもの頭に入っていったものだ。

しかし21世紀に入って、地上波での野球中継が激減するとともに、サッカーやバスケットボールなど「子どものスポーツの選択肢」が増えて、野球は「子どもの好きな遊び」ではなくなっていく。

青少年のスポーツ団体である「スポーツ少年団」のデータによると、2002年3月の小学生の軟式野球競技人口は15万9659人だったが20年後の2022年3月の10万7033人と33%減少した。

しかしこれはユニフォームを着て正式に野球をする野球選手の数字であり、昔はそれ以外に「空き地で野球遊びをする子ども」がたくさんいた。

野球のユニホームを着た3人の少年
写真=iStock.com/RichVintage
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漫画「ドラえもん」では、のび太やジャイアンは空き地にバットやグローブを持って集まり、野球遊びをしていたが、そういう統計には含まれない「野球好きの子ども」が、ユニフォームを着た「野球選手」の数倍はいたのだ。

空き地がなくなり、公園での球技が禁止され、さらには地上波で子どもがナイター中継を見なくなるとともに小学生の「野球遊び」はほぼ絶滅した。

競技が成立しない状況

昔は野球遊びで飽き足らなくなった子どもや、親が熱心だった子どもがスポーツ少年団などに入って本物の野球を始めた。

今は「野球がやりたい」と思った子どもは、どんな初心者であれ本物の「野球チーム」に入らなければならない。そして選手の絶対数が不足する中で「まだボールを投げたり捕ったりすることが十分にできない」レベルの子どもたちもユニフォームを着て、試合に出ることになるのだ。

小学生のレベルでも、盗塁を阻止できるようなスキルを持った選手も少数ながらいる。昔の少年野球はそういうハイレベルな子どもたちの活躍の場だった。しかし競技人口が減った今は初心者以前の子どもから上級者までが一緒に試合をしているのだ。

小学生の「走り放題」は、すそ野が枯渇する中で、小学生世代で「野球」という競技が成立しなくなる「前兆」だと言ってよい。