造りつけの収納があれば理想的だが…

先程、収納家具は収納量で考えるというお話をしましたが、キッチンの食器や調理器具、子供のおもちゃやリビング周りの小物や雑貨など、大量の収納物を片付けるには、どうしてもそれなりの収納スペースが必要です。

1番望ましいのは、カップボードや吊戸棚、リビング収納やダイニング収納など、部屋に造りつけの収納スペースがあることです。造りつけの収納家具は、床から天井までと空間の無駄もなくサイズも大きいため、収納量が大きいことが最大のメリットです。また、地震時に転倒などの危険もありません。

しかし、キッチンやリビング・ダイニングに、初めからこのような収納スペースを確保した間取りは、とても少ないのが現状です。なぜ収納スペースを、あらかじめ部屋に確保していない間取りが多いのでしょうか。それには、設計者側の都合があります。

設計者は間取り図の畳数を稼ぎたい

部屋を借りる場合や、自宅を購入する際は、いくつかの物件の資料を取り寄せ、間取り図などの情報を見比べます。その時、最初に比較・確認するのが、「LD12畳」など、その部屋の広さです。もし、部屋にリビング収納などの収納スペースを造ってしまうと、そのぶん部屋が狭くなります。本来なら「LD12畳」の部屋でも、1畳の収納スペースを作れば、間取り図の記載は「LD11畳」になってしまうため、狭い部屋という印象を与えてしまいます。

しかまのりこ『狭い部屋でも快適に暮らすための家具配置のルール』(彩図社)
しかまのりこ『狭い部屋でも快適に暮らすための家具配置のルール』(彩図社)

そのため、実際には家具を置いてしまうぶん狭くなる部屋であっても「LD12畳」という広い部屋という印象を強くするため、収納スペースをあえて作らないのです。このように、設計者の都合で収納スペースが造られないことはとても多く、その結果、入居してから収納に困ってしまいます。そしてその場合は、不足する収納スペースは家具で賄わなければなりません。この時、家具の置き方次第で、収納を確保するとともに、部屋の空間分けをすることで片付きやすい部屋にすることができます。

では、収納スペースを造りながら部屋を空間分けする実際の方法を、解決例で詳しく見ていきましょう。