働くことの収入以外の効用【妻・加代の視点】
内閣府が公表しているデータによれば、現在、男女とも60代前半は6割以上、70~74歳でも4割近くが収入のある仕事をしています(図表3)。
調査対象者に仕事をしている理由を聞いたところ、男女ともにいちばん多い回答が「収入がほしいから」で、60代前半の男性では65%と突出して高くなっています(女性は同48%)。
その回答割合は年齢が上がるごとに減っていき、「働くのは体によいから、老化を防ぐから」「仕事そのものが面白いから、自分の知識・能力を生かせるから」の割合が高くなっていきます(図表4)。
このことから、年を重ねても“働く”ことには収入以外の多くの効用がありそうです。
就業率が高い県ほど医療・介護費の負担額が低い
実際に65歳以上の就業率と医療・介護費について調べた調査では、就業率の高い県ほど医療・介護費の一人当たり負担額が低いという結果や、一年前に就業していない者より就業している者のほうが「健康」を維持する確率、「不健康」が「健康」へ改善される確率が高いとの結果が報告されています。働くことは健康にいいのです。
仕事をしていれば休んで迷惑をかけるわけにはいきませんから、体調に気を配ります。
自分の意志だけでお酒や夜更かしの甘い誘惑に抗うことは難しいものですが、翌日に仕事があれば、職場や仕事相手の顔が浮かび、節度を保つことができます。
体力が必要な仕事であれば、筋トレなどをして体力維持に努めるケースもあるでしょう。
無収入時代に「世の中に居場所がなくなった」と喪失感を覚えた私からすると、仕事は自己肯定感を高めることにつながり、メンタルヘルス上もプラスに働くのは間違いないと感じます。
特に長年、収入を得て仕事をすることに慣れ親しんできた人ほど、この精神面でのプラス効果は大きいはず。できるだけ長く働くほうがよいと思います。
そして「働く」ことの価値を「経済的な必要性」ではなく、「自分の心や体にとってよいから」という方向にソフトランディングできると、「月○万円以上」「月△時間」といった条件にも縛られなくなります。こうなると、働く場所を見つけることのハードルが下がっていきます。
正社員かつ高収入、というこだわりを捨てる──、これが年を重ねても働き続けられるポイントかもしれません。夫を含めてそれなりの年齢で自由に楽しそうに働いている人たちは、いずれもこのタイプです。