“不親切な新担任”に代わった途端、再び登校を始めた

●事例3 クラスが変わって自然と登校するようになったCさん(高学年男子)

前年度に不登校が始まり、ほとんど学校に来なかったCさん。原因は全く不明。前年度の担任は、毎日のように熱心に家庭訪問をして授業内容を伝えたりその学習プリントを渡したり、個別対応マニュアルを作成したりと、相当に努力をした。しかし、全く登校せずにその学年は終わった。

学年が上がってクラスのメンバーの顔ぶれが変わり、初日は登校できたものの、やはり来たり来なかったり。前年度ですっかり生活習慣が崩れており、朝起きられなくなっていたようである。

新担任は「来られる日には遅刻してでもいいから、いつでもおいで」と伝え、来ない日には電話してその日の様子を本人に聞く、という程度の淡々とした対応を続けた。

やがて、2日続けて登校する日が出て、また休むということを繰り返し、だんだんと登校できる日が延びてきた。そして、6月頃には普通に登校するようになった。本人に「何で来られるようになったの?」と聞いても、さっぱりわからない様子だった。

この事例は、「不親切教師」を自称する筆者が受け持った学級で最も多いパターンである。「不親切教師」とは、拙著『不親切教師のススメ』(さくら社)でも書いたが、手取り足取りの指導や親切すぎる指導をせず、子供に内在する成長の種や主体性を信じ、あえて見守るスタンスをとることを基本姿勢とする教員である。

よって筆者は、基本的に不登校を選ぶ子供に対し、あまり登校刺激(登校するよう促す行為)をしない。事例3の担任と同様「来たいと思ったらいつ来てもいい」というスタンスである。なぜならば、本人がそれを選択するには理由があり、強制しても仕方ないし、かえってありがた迷惑になると考えているからである。

デジタルトランスフォーメーション。
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クラス替えによって自然に解消したという場合は、原因の特定はしにくいが、前年度までに次のような問題があったことが推測される。

①学級内でのいじめなど、クラス内の人間関係に不安があった
②授業内容でわからない部分や、つまらない部分が多くあった
③担任との関係性が悪い

上記①~③は、学級担任の責任が問われる可能性のある事案である。もし学校側に不登校を減らす対策として努力できる点があるとしたら、ここである(ただし、ここが原因の場合に限る)。

学校の校内研修会では、学級づくりや授業に関する研究を重要視しているが、それだけでなくこの点を本質的に改善していく必要がある。