「陰キャ」道を究める元天才子役

3位 安達祐実 名子役→不遇の母→奇跡の40代→陰キャ炸裂の新境地へ

長いキャリアで培った高い演技力は、悲劇の象徴としても存在感を発揮。が、ここ数年の安達祐実は「陰キャ」道を究めている気がする。「警視庁ゼロ係」(テレ東)では一言多くて斜に構えた事務員役が好評だし、「リーガルV」(テレ朝)では過去に横領で服役したパラリーガル役も、陰キャとして輝いていた。いや、輝いたら陰キャじゃないんだけど、スパイスとして適役だった。

陰キャとは言い切れないものの、「海月姫」(フジ)で演じたドールマニア役(しゃべり方が完全にオタク)には説得力があったし、朝ドラ「カムカムエヴリバディ」で演じた女優・美咲すみれ役には毎回笑わせてもらった。こうるせーし、めんどくせー女優なのよ、すみれ。

現在、放送中の「ザ・トラベルナース」(テレ朝)では毒舌&冷徹な看護師役だが、居丈高な男とどんくさい女が大嫌いで、吐く言葉は手厳しい。怒りの感情を明確な言葉にするのが頼もしくて、かつ面白い。ヒモの元夫(松尾諭)に情をかける優しさもあるが、「裏」の笑いを届けてくれる。

北条義時の妹役は彼女以外ありえなかった

2位 宮澤エマ 無表情で失笑を誘う、期待値大のコメディエンヌ

テレビドラマは寡作の人だが、映画『記憶にございません!』で演じた通訳の役がそれこそ記憶に残る名演だった。がっつりコメディの中でひとり淡々と職務に徹する姿が、逆におかしくて。通訳独特の平坦なしゃべり方や間合いのとり方、「ヨッ、大統領!」という些末な掛け声まで丁寧に訳しちゃう生真面目さ。天性のコメディ筋肉がある! と思ったのがはじまり。「裏」系のおかしさがにじみ出る。

実際には、ワケありな役も多い。朝ドラ「おちょやん」ではクズオヤジの後妻・栗子役。貧しい時代に三味線ひとつで男を手玉に生き抜いた、したたかな女だったが、最終的にはヒロインへの罪悪感を抱えた「好敵」に。「和田家の男たち」(テレ朝)では、主人公の家族(のスペック)にグイグイとにじり寄る、圧の強い女だった。

これらの強烈な役柄を経て、大河「鎌倉殿の13人」である。

「鎌倉殿~」は手練れぞろい、そこにいるだけで笑いをとれる猛者ばかり。その中で皮肉百連発、男の沽券を一蹴する笑いを生む実衣は、宮澤エマにしか演じられなかったと思う。