価格が高くなりすぎて、既婚で新築マンションを買う人の74.3%が共働き世帯になっている。住宅ジャーナリスト山下和之さんは「パワーカップルは思い切った借り入れを行っているが、共働き世帯が抱えるリスクを見落としてはならない」という――。
東京湾岸の高層ビル群
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首都圏の新築マンションの平均価格は約4割上昇

リクルートのSUUMOリサーチセンターでは、毎年新築マンションを買った人を対象に実態調査を行っているが、その最新の2021年版をみると、全体では58.9%が共働きで、既婚世帯に限ると共働きの割合は74.3%に達する。新築マンション購入者の6割近くが共働きで、既婚世帯に限ると4組に3組近くが共働きということになる。

民間調査機関の不動産経済研究所によると、首都圏の新築マンションの平均価格は、2012年には4540万円だったのが、2021年には6260万円に上がっている。その間の上昇率は37.9%。近畿圏も3438万円から4562万円に32.7%の上昇率だ。

その間、会社員の収入はほとんど上がっていないから、共働きしないことには、とても買えなくなっているといっていいだろう。

マンション市場で存在感高まるパワーカップル

そのなかで注目されているのがパワーカップルの存在だ。

パワーカップルについては厳密な定義があるわけではないが、一般的には共働きで、世帯総収入が1000万円以上の世帯を指すことが多く、なかには1400万円以上、夫婦合計の年収2000万円とするケースもある。

先のリクルートの調査では、ライフステージ別の分析として、既婚世帯で世帯総年収1000万円以上と1000万円未満に分類しているので、ここではひとまず1000万円以上の世帯をパワーカップルとしておこう。

その世帯総年収1000万円以上の世帯の特徴をみると、図表1にあるように購入価格に他の世帯との間に大きな差があることが分かる。全体では平均5709万円なのが、共働き世帯では5975万円になり、世帯総年収1000万円以上のパワーカップルでは6939万円と7000万円近くに達する。全体平均を1000万円以上上回っている。

【図表】ライフステージ別の購入価格