50歳よりも75歳が仕事に満足な理由

とはいえ、これまで堅実にキャリアを積んできた会社員が大志だけを抱いて「えいやっ」と会社を辞めるのは、リスクが大きすぎます。自分がやりたいことを見定めたら、次は、会社という学びの宝庫を賢く使い、独立に向けて周到に準備すべきです。会社を離れてひとり社長になると、商品企画や経営戦略、さらには営業・経理・財務・法務・購買・総務まで、すべてを自分でカバーしなくてはいけませんから、会社員のあいだに基礎的な知識を身に付けておくといいでしょう。異動願を出したり社内副業制度を利用したりすれば実務経験を積むことができます。

個人で事業を起こしたら、それまでは部下や委託先が手足となってやってくれていたことも、すべて自分でこなさなければなりません。ポストオフは、改めて実務を学び直し、現場の肌感覚を取り戻す絶好のチャンス。自分で考え自分で行動するための筋肉を、しっかりリハビリしましょう。55歳で役職定年を迎える、60歳で正社員から嘱託職員になるという選択も、独立のための助走期間として前向きに位置付けることが十分可能です。

リクルートワークス研究所の調査では、仕事の満足度は50歳が底で徐々に上がり、75歳では50歳の約1.7倍になるというデータが出ています。「レイバー(labor)」と「ワーク(work)」は、どちらも働くことを意味する英単語ですが、前者がラテン語の「苦役」を由来とする一方、後者はゲルマン語の「自主的に活動する」ことが語源です。会社員時代の仕事がレイバーなのに対し、定年後のそれは自分がやりたい仕事を自分のペースでするワーク。雇用や給与が若い頃と比べて不安定にもかかわらず、より仕事への満足を感じられるのは、これが理由です。

仕事に満足している人の割合は、75歳では50歳の1.7倍に

もはや、ひとつの会社にしがみつくこと自体がリスクの時代です。それに、私たちはみな、受け身のレイバーから脱却し、主体的なワークを目指すべきではないでしょうか。独立したいけど不安だ、独立したけど仕事がない――そんなときは、「自分がやりたいことは何か」という問いに立ち返ってみてください。その答えを再確認して、ワクワクする気持ちが再び胸に湧いてきたとき、あなたはどんな困難にも立ち向かえるはずです。

(文=奥地維也)
【関連記事】
「お金持ちだからではない」頭のいい子が育つ家庭に共通する"幼児期のある習慣"
「脳トレはほぼ無意味だった」認知症になっても進行がゆっくりな人が毎日していたこと
「日本はご飯が美味しくていい国だけど…」旅行先を日本→東南アジアに切り替えた英国人のホンネ
「溶けないアイス」で大逆転…10年赤字の老舗和菓子店を救った「元ギャル女将」のアイデア
名車「クラウン」があっという間に売れなくなった本当の理由