使い回されたセットで名シーンが台無しに
難点は出だしにあった。1話は“1.5倍速感”が強く、実際にオリジナルの約1時間半分を大胆にも約1時間の話に収めていた。オリジナルと全く同じ尺でリメイクするケースはそもそも少なく、1クールの中で毎週1話ずつ放送する日本の放送スタイルに合わせて縮小したことにも文句はないが、ドラマの世界観を伝える大事な趣が排除されたように思えたのは残念だった。
オリジナルとの比較はリメイク作品にありがちの余計な心配事でもある。だが、「六本木クラス」の場合、リメイクを超えてまるで再現しているかのようでもある。それゆえに、オリジナルとのクオリティーの違いを当初、感じざるを得なかった。言うなれば、チープさが目立った。
印象的なシーンであればあるほど、その差は増した。たとえば、竹内が演じる新(あらた)が居酒屋「二代目みやべ」を立ち上げる原点となる父親との晩酌シーンだ。使い回されているようなセットの一室では「酒が甘いのは、今日一日が衝撃的だった証拠だ」という本来は心に残るせりふが残念ながら響いてこなかった。
日本のドラマ制作費は韓国の10分の1程度
クオリティーは制作費に必ずしも比例しないが、この10年で韓国ドラマの制作費は高騰し、Netflix韓国のドラマ作品は1話平均2億円に上る。日本の民放プライム帯ドラマの平均値と比べると、10倍ほどの開きがある。要するに、クオリティーにこだわる余裕が韓国にはあるのだ。
それはルックと呼ばれる作品全体のビジュアルにも影響し、カメラや照明技術の違いからチープさなどを回避する。「六本木クラス」は制作費が平均よりかけられているようだが、オリジナルの予算概算は日本版の5倍以上だ。物足りなさを感じるわけである。
それでもだ。「六本木クラス」は面白くなっていった。ビジネスドラマの要素から、下剋上、復讐、青春群像劇、ラブストーリーまで程よく詰まった幕の内弁当のような楽しさがこのドラマにはある。オリジナル通りであれば終盤戦に入ると、クライム要素が一層強まる。ありそうでなかなかないバリエーションの多さだ。しかも、主人公の「信念」という筋が一本通っているため、破綻していない。