モラハラ夫の更生は可能なのか。離婚弁護士の大貫憲介さんは「夫のモラハラに苦しみ離婚を考えながらも『昔の優しい彼に戻るかもしれない』という淡い期待を抱いて、決断できない妻は多い。しかし、一度“モラスイッチ”が入って本性を現したモラ夫が、反省して優しい健全男子となることは、まずあり得ない」という――。(第3回/全3回)

※本稿は、大貫憲介・榎本まみ『私、夫が嫌いです モラ夫バスターが教える“なぜかツライ”関係から抜け出す方法』(日本法令)の一部を再編集したものです。

“毒バイス”で我慢してしまう被害妻たち

被害妻たちは、離婚を考え始めてもなかなか決断できない。「私が我慢すればいい」「まだまだ頑張れる」と考えて、結婚生活を続けることが多い。

周りからも「我慢しなさい」「夫を立てていればよい」「(夫を)手のひらで転がして」などとアドバイスを受ける。このようなアドバイスは、妻の「不幸」な状態をいわば「放置」するに等しく、妻の悩みを解決することはない。

つまり、妻は周りからも現状維持を諭され、モラ被害が深刻化していく。私はこのようなアドバイスを「毒バイス」と呼んでいる。

離婚に憧れながらも、離婚を決断できないでいる妻は多い。しかし、既に述べたとおり、不幸を放置すると自らの心身の健康を損ない、取り返しのつかない結果になることもある。

まずは、自分自身を味方につけよう。そして、自らの「幸せ」の実現を考えよう。自分自身のことは、自分の心が一番よく知っていることである。

「この程度ではモラハラとはいえませんよね?」

モラ被害が深刻なほど、当然被害妻の悩みは深い。そして被害妻たちは、心の底では「離婚したい」と願って法律相談に訪れる。

モラ被害の弁護経験より、表情、物腰、話し方などによって、モラ被害をある程度推測できる。そこで、「随分とモラハラを受けてきましたね」と聞くと、妻たちは驚いた顔で「わかりますか?」と聞き返す。そして、日々ディスられ、怒られていることをポツポツと語り出し、「この程度ではモラハラとはいえませんよね?」と私に同意を求める。

「いや、モラハラです」と断定しても、「軽いほうですよね?」と食い下がる。妻たちは、まるでモラハラを否定して、「まだまだ頑張れる」と言ってほしいのではないかと錯覚しそうなほどである。しかも、こういうパターンほどモラ被害は深刻なことが多い。