数百年から数千年かけて優しく非暴力的になりつづけている人類史を考えると、だんだんとベジタリアン・ビーガン的なあの感じが人類全体に拡がっていくのだろう。

すると、ネコと人間の区別や、人間とゴキブリの区別は薄れて大事ではなくなっていく。そうなれば政治家の好かれるキャラはネコで、嫌われるキャラはゴキブリか何かに分解しておけばいいのではないか? 本気でそう考えている。

有権者と握手をする選挙活動中の日本人男性
写真=iStock.com/Shoko Shimabukuro
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アメリカ大統領選に立候補した“オスネコ”

ネコが政治家になる世界は思ったより早く到来しそうだ。

2022年春には元おニャン子クラブの生稲晃子氏が参院選への出馬を表明した。それどころではない。実は本物のネコがすでにアメリカ大統領選に出馬済みである。

1988年の大統領選挙に出馬したオスネコ「モリス」だ。モリスは当時人気のキャットフードの広告塔だった。テレビや雑誌に出まくっていたモリスの露出度は抜群で、そこらの政治家より高い知名度を誇っていた。

「立候補するには人間でなければならない」という制約は、大統領選の規則には実はなかった。この穴を突いて立候補したのがモリスだった。開かれた出馬記者会見で代理人の人間はこう述べたという。

「モリスは、第30代大統領カルビン・クーリッジの静かな態度、第35代大統領ジョン・ケネディの動物的な魅力、そして第16代大統領アブラハム・リンカーンの正直さを兼ね備えた候補者だ」

名演説だ。結果としては惜しくもジョージ・H・W・ブッシュ(父ブッシュ)に敗れたモリスネコは、しかし、爆発的な注目を集め広告塔を務めていたキャットフードの売上を爆増させたという。これほどの「政商」がかつていただろうか?

ブタ、チンパンジー、七面鳥キャラも立候補

ネコ市長が実質的に誕生したこともある。

アメリカのアラスカ州タルキートナ市だ。出馬した人間候補者を気に入らなかった住民たちが勝手にネコ市長候補「スタッブス」を擁立し、投票用紙にネコの名前を記入する運動をくり広げた。フタを開けてみると、なんと他候補を破ってしまったという逸話だ。

ネコだけの特権ではない。68年のアメリカ大統領選挙にはブタが、88年のリオデジャネイロ市長選挙にはチンパンジーが、97年のアイルランド大統領選挙には七面鳥キャラが立候補し、多くの票を獲得した。動物が人間から政治家という職業を奪うまであと一歩だ。

こうしたことを言うと「しかしネコやゴキブリは言葉をしゃべれない」と言ってくる人が多い。

だが、数百年前のヨーロッパ人植民者たちは、自分たちの言語が通じない植民地の他民族のホモ・サピエンスをコミュニケーション相手や(被)選挙権の主体だなどと思っていただろうか?

ほとんど動物と同じだと見なしていたからこそ、ごく自然に奴隷として酷使できたのではないだろうか? その精神性が時間をかけて変わってきた。

ネコやゴキブリも同じだ。そもそも言語を通じてゴキブリやネコとやりとりする必要もない。