国民皆年金制度のある日本では高齢者の貧困立は低い

(1)貧困率とワーキング・プア率

まず、日本の貧困の現状を、相対的貧困率とワーキング・プア率の韓国、台湾、香港との比較から見ていきます。

図表1は、日本、韓国、台湾、香港における相対的貧困率(全年齢)と、18~64歳のワーキング・プア率を示しています。ここで用いられている相対的貧困率の定義は、手取りの世帯所得(世帯員全員の所得の合計)が、社会全体の中央値の50%に満たない世帯に属する人の割合です。世帯所得は世帯人数で調整した値を用います。ワーキング・プア率も同様に計算しますが、こちらは、18~64歳の何らかの就労をしている個人のなかで相対的貧困の人の割合となります。

図表1を見ると、日本の相対的貧困率は、韓国、香港に続き3番目となっていますが、台湾に比べると5ポイント以上高い数値となっています。日本の相対的貧困率の高さは、一部は日本の高齢化率(表内の【参考】)が他の3カ国に比べて高いからでもあります。

一般的に、公的年金制度などの社会保障制度が発展途上の国では、高齢者の方が勤労世代よりも貧困率が高い傾向があり、このような状況下では高齢化率が高い国の方が相対的貧困率も高くなります。日本は、4カ国のなかでもっとも高齢化率が高いのにもかかわらず、比較的に相対的貧困率を低く保てているので、その点では優等生と言えるでしょう。

実際に、65歳以上の貧困率は、日本は20.0%であるのに対し、韓国では43.4%と大幅に高く、香港も32.0%と日本よりも高い数値となっています。これは、日本では1961年に国民皆年金が達成されたのに対し、韓国では1988年と比較的に最近であり、台湾、香港では、いまだに全国民がカバーされる公的年金が整備されていないことにあります。

日本の貧困は高齢者ではなく働き世代の問題

一方で、勤労世代のワーキング・プア率を見てみましょう。図表1のワーキング・プア率を見ると、日本は4カ国中のなかでもっとも高い10.8%となっています。韓国、香港では7.0%台、台湾では3.7%と日本の貧困率の3分の1ほどです。

すなわち、日本では働いていても貧困線以下の所得の世帯に属している人が10人に1人ということになります。ワーキング・プア率は、働いている勤労世代の貧困率なので、子どもの貧困にも直結します。ここからも、他の3カ国に比べて、日本の貧困は、働いていない高齢者や失業者の問題というよりも、働いている若年・中年世代の問題ということが分かります。