KDDIの通信障害をめぐり、テレビや新聞では「クルマの自動運転の安全性も不安視される」との報道が相次いだ。本当にそんな危険性があるのか。経済ジャーナリストの安井孝之さんは「とんでもないミスリードだ。通信障害と事故が結び付くことはあり得ない。メディアが間違った情報で不安を煽ってはいけない」という――。
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自動運転で「命に関わる事故が起きかねない」は本当か

7月上旬に起きたKDDIの大規模な通信障害で驚いたことがあった。将来、自動運転が普及したときに同じような通信障害が起きれば「命に関わる事故が起きかねない」とテレビや大手新聞で警告を発していたからだ。「飛行機は落ちるかもしれないから乗らない方が良い」というような話を垂れ流すメディアに嘆きたくなった。

土曜日の7月2日未明から始まったKDDIの通信障害は週明けの4日も続いた。テレビの朝のワイドショーでは格好の材料だった。テレビ朝日の「羽鳥慎一モーニングショー」(7月4日放送)では元官僚で弁護士のコメンテーターが「例えば自動運転なんてこともこれからあるわけですけど、その時に通信が途切れたら、それこそ命に関わる事故なんて増えるんじゃないか」と心配顔だった。

NHKでも同じ日に、解説委員が「人命に関わるおそれがある自動運転や病院での設備などの場合は、いざという時に備えて複数の通信回線を義務づける、といった検討も必要」と対応策まで提案していた。(7月4日放送

将来、手術ロボットを使って遠隔地から専門医が手術をしているときに通信障害が起きれば、それこそ命に関わるだろう。そういう意味で「通信障害が命につながることがある」という指摘自体を否定する気はない。しかし、こと自動運転に関して言えば、一体どのようにして命が危険にさらされるのか、私には思いつかなかったのだ。