「セクハラに耐えられない」親日タイ人女性の悲鳴
こうした性被害の問題は、東南アジアに進出する日系企業の人材採用にも影を落としている。
日系企業で働いていたタイ人女性からは、「飲み会でのお酌の強要や、肩を抱かれるといったセクハラに耐えられなくなった」「上司に夜の誘いを何度も受け、苦痛になり退職した」といった声も聞こえてくる。
日系企業で働く彼女たちは、日本の文化が好きで、大学で日本語を専攻するなど、時間とお金をかけて日本語を学んできている。
だが、セクハラ被害に遭ったタイ人女性らは「もう日本企業で働きたくない」と口をそろえる。
企業の国際競争が厳しさを増す中、日本企業はこうした親日で優秀な人材を、その「人権意識の欠如」のせいで、失っている事例もあるのだ。
「古い価値観」から脱却しなければ中国・韓国に負ける
アジアの新興国が台頭する中、海外に進出する日系企業をとりまく環境は、大きく変化している。
「1990年代、タイで優れた会社といえば日系企業だった。いまはタイでも経営がしっかりしている会社が増えており、欧米や韓国、中国の会社にも、魅力的な会社はたくさんある。相対的に、日系企業以外の選択肢が増えている」。
タイで日系企業向けに人材紹介を行う、パーソネルコンサルタントの小田原靖社長は、そう指摘する。
そうした中で、セクハラやパワハラといった労働問題に加えて、「一律昇給や年功序列のような日本独特の制度が、外国人材獲得の足かせになっている側面もある」と指摘する。
日本では高齢化、人口減少が続き、国力の低下が懸念されている。
そうした中、日本企業が生き残るためには、海外での新規市場開拓や、海外事業展開を加速せざるを得ない現状がある。
一方、現在のように、ネット社会が発達すると、不適切な行為があれば、すぐネット上で炎上してしまう。
それがきっかけで、一企業のみならず、国全体のイメージが悪化してしまうことも考えられる。
そうした状況の中、個々の日本人、日本企業ともに、古い価値観から脱却し、人権意識をアップデートしなければ、大炎上は今後も続くだろう。
日本人のイメージをこれ以上悪化させないためにも、海外におけるコンプラ意識をより高めることが求められている。