(1)二重らせん
ジェームス・ワトソン

(2)インスリンの発見
マイケル・ブリス

(1)は分子生物学、(2)は医学の話だが、ともに人間ドラマとして読める。(2)ではカナダのまったく無名の若き医師がインスリンの発見でノーベル賞を受賞。誰が賞を貰うべきか、共同研究者は誰なのか。受賞により人生が狂っていくさまがスリリングに描かれ、医学的知識がゼロでも楽しく読める。

(3)動く遺伝子
エブリン・フォックス・ケラー

こちらも(1)と同様、分子生物学の分野が舞台。82歳にしてノーベル賞を自然科学分野で単独受賞した初の女性科学者、バーバラ・マクリントック。長年、トウモロコシの研究に打ち込み、周囲からは「ヘンなおばあさん」と呼ばれていた。受賞の知らせを受けたときのエピソードが印象に残る。

(4)スモールワールド・ネットワーク―世界を知るための新科学的思考法
ダンカン・ワッツ

(5)スティーブ・ジョブズ―偶像復活
ジェフリー・S・ヤング ウィリアム・L・サイモン

IT分野でのお勧め。ジョブズという非常に個性的な人間の伝記をとおして、ITの世界の競争と発展が臨場感をもって伝わる。同時に、成功には才能はもちろん必要だが、根性とさらには運がいかに大事かがわかる。書き手がうまい。原題の「iCon」も秀逸。

(6)宇宙からの帰還
立花 隆

言わずと知れた名著。まだまだ特殊といえる宇宙飛行士という職業。人が特殊と思われる体験をしたときにどう感じるか。体験が与える影響は人によりまったく違う。普遍性とは何かを考えさせられる。単純に読み物としてもおもしろい。何度も買い、何を隠そう単行本で5冊もっている。

(7)アンドロメダ病原体
マイクル・クライトン

SF(科学小説)の名著の中で最も好きな作品。2008年に亡くなったクライトンの若き日の作。文庫版の訳者あとがきに「作品が巻き起こした波紋は1969年のアメリカ出版界の一つの事件と呼ぶにふさわしいものだった」とある。

(8)ワンダフル・ライフ―バージェス頁岩と生物進化の物語
スティーヴン・ジェイ・グールド

(9)G・ガモフ コレクション 1~4巻(トムキンスの冒険/太陽と月と地球と/宇宙=1、2、3…無限大/物理学の探検)
ジョージ・ガモフ

いちばんのお勧めは(8)と(9)だ。読みやすさでは(2)と(5)と(6)の3冊がベスト3だが、頑張れる人はぜひ挑戦を。ガモフはビッグバンを提唱した物理学者。宇宙はどのように誕生し、どのように動いているのか。量子力学とは、相対性理論とは何か。旧版のガモフ全集13巻(プラス別巻3冊)は一気に完読。この本で物理学を学んだ。かわいいイラスト入り。

※すべて雑誌掲載当時

(西川修一=構成 市来朋久、佐粧俊之=撮影)