実生活にはほとんど役に立たない

実際問題として、「仕事に活かせる脳トレ」は皆無と言ってもいいですし、スマホ上での脳トレアプリを含めて「実生活にはほとんど役に立たない」と比較的最近(2021年)でも結論されています。

私自身は、汎化が起きて知能(一般知能を含む人間性知能HQ)を全体的に向上させ得る科学的な「脳トレ(HQ向上訓練)」を開発していますし、一部の人は実践していますが(もちろん、相当な効果があって、仕事を含めた実生活にも波及します)、その脳トレはほぼ研究用で、内容的にツマラナイです。というか、メンドーです。メンドーなことはしたくない、しないというのが脳の本質的特徴の一つですから、最初は積極的に行なっていても、やがては飽きてしなくなってしまいます。

それで、1年ごとに一時期・数週間(1日10~20分)でOK、という脳トレを一般向けに開発しましたが、やっぱりメンドーというか、1年ごとに訓練することを往々にして忘れてしまいます。忘れることも脳の本質的特徴の一つなので、これまた仕方ありません。

脳トレよりも面倒でなく続けられる方法

そこで浮かび上がってくるのが(唐突かもしれませんが)「進化的な営為(方法・生活習慣)」です。

人類の高知能化は適応放散を含む進化の結果ですし、進化的な営為は本質的に根強いので、脳に有益な進化的営為を無意識にもしていることが多いです。

もちろん、する程度には個人差はありますが、さほどメンドーではないか、あるいは、メンドーでもするのが、進化的営為です。「忘れる」ということも原理的にありません。

また、現代社会の環境、特にIT系環境では、脳がストレス等で「異常」になって仕事効率が下がるのみならず、抑うつや不安的になることも往々にして起こりますが、ではそうした脳状態を修正するにはどうしたらよいか? という問題意識に基づいて研究したところ、「進化的な環境・営為」であることが分かってきた、という経緯があります。

あるいは、進化的な観点とは無関係に脳機能向上法を研究してきたら、その方法は結局のところ進化的なものだった、という流れもあります。

男性進化したシルエット
写真=iStock.com/JuliarStudio
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