視界に入らないが、気配は感じる距離感

こうした負のサイクルから抜け出すには、環境を変えることが有効だと、辻さんは話す。いったん縮まった距離を、あえて物理的に離すのだ。

「かつて“リビング学習”といえば、リビングにダイニングテーブルを置いて、そこで子供が勉強するスタイルが定番でした。ところが最近、距離が近いと無駄に“親子バトル”が増えるからと、ダイニングテーブルとは別に学習机をリビングに置いて、子供が親に背を向けて勉強できるよう配置換えをするご家庭が増えています。

スペースが十分に取れないリビングでは、少しでも距離を保てるように、ついたてをしたりして工夫をしているご家庭もあります。

親はキッチンで料理をしたりして近くにはいる。気配は感じるけれど視界には入らない。視界に入ったとしても、お互いにあえて干渉をしないように意識しているのです。

こうしてあえて距離を置いた結果、親子バトルの時間が激減し、子供は勉強に集中。成績も上がったという声はよくいただきます」(辻さん)

日差しが差し込む部屋で読書する少女
写真=iStock.com/kohei_hara
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「うちの子は何度説明しても覚えられない」に潜む誤解

もう一つ、親の固定観念を変えることも大切だ。西村さんが説く。

「『うちの子は何度説明しても覚えられない』と悩む親御さんは、解けないことを記憶力のなさに求めがち。ですが、そもそも算数に関しては、記憶する教科ではありません。考えて、納得する過程が必要な教科です。親世代の大学受験では、“覚える”ことが必須だったかもしれませんが、今は“思考力”が試されるようになっていることを念頭に置いてください。

また、考えて納得して理解するにしても、小学生で、大人と同じようにパッパッと理解できる子はほんの一握りしかいません。大人と違い圧倒的に知識量が少ないわけですから、理解するまで多少なりとも時間がかかります。『まぁ、こんなもんだよね』ととらえることも大切です」(西村さん)