石炭より3倍かかるコストをどこまで下げられるか

疑問③「既存の火力発電と比べてコストが高くないか」

現状では、火力発電用の燃料アンモニアのコストは確かに高い。2022年6月14日に開かれた総合資源エネルギー調査会基本政策分科会第49回会合において、事務局を務める資源エネルギー庁は、足元のNm3-H2当たりの燃料価格について、一般石炭は7円程度、LNGは13円程度、グレーアンモニアは20円程度と説明した。

この分科会の席上、資源エネルギー庁は、既存燃料とのコスト差を縮小するため、「発電用の燃料アンモニアについて2030年に10円台後半/Nm3-H2の供給価格を目標とする」とし、以下のようなさまざまな支援策を講じる意向を表明した。

・「ハーバーボッシュ法」に代わるアンモニア新合成技術や再エネから一気通貫でアンモニアを合成するグリーンアンモニア電解合成の技術開発を支援
・低廉かつ安価なサプライチェーン実現に向け、資源国との連携強化を進める
・貯蔵用タンクの整備などインフラ整備の在り方などにも注目しながら、導入拡大、商用化に向けた支援措置の詳細検討を行う

なお、ここで登場する「ハーバーボッシュ法」とは、20世紀の初頭にドイツで開発され現在でも広く使われている画期的なアンモニアの合成法のことであるが、最近ではエネルギーを大量に消費する点が問題視されるようになっている。

石炭採掘を模したおもちゃのフィギア
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アンモニアを「いの一番」に挙げた政府の決意

この分科会の主たる目的は、経済産業省が2022年5月13日にまとめた「クリーンエネルギー戦略 中間整理」の内容を説明することにあった。

この中間整理は、GX(グリーントランスフォーメーション)を実現するための重点分野・産業として、アンモニア、水素、洋上風力、蓄電池、原子力、二酸化炭素分離回収、コンクリート・セメント、SAF(持続可能な航空燃料)、合成メタン、合成燃料・グリーンLPG(液化石油ガス)、化学、バイオものづくり、鉄鋼、自動車、運輸、住宅・建築物・インフラ、食料・農林水産業を、幅広く取り上げている。

そのなかで「いの一番」に挙げられているのはアンモニアである。また、第49回会合で資源エネルギー庁がGXの重点分野・産業について説明した際にも、大半の時間を割いたのはアンモニアに関してであった。これらの事実から、燃料アンモニアの社会実装にかける日本政府の並々ならぬ決意を窺い知ることができる。