2050年には30倍の量のアンモニアが必要になる

疑問②「アンモニアをどのように調達するのか」

これは大問題であり、石炭火力のアンモニア転換を実現するうえでの最大の課題だと言える。

日本は現在、年間約100万トンのアンモニアを肥料用等に消費している。しかし、石炭火力でアンモニアを20%混焼した場合、大型機1基で年間50万トンのアンモニアが必要となる。政府が2021年6月に改定した「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」では、発電用に必要な年間のアンモニア量を2030年に300万トン、2050年に3000万トンと見込んでいる。

しかも、この需要見通しは上方修正される可能性が高い。化学産業やセメント産業でも「カーボンニュートラル化の切り札」として、「ナフサクラッカー」というエチレン製造装置や「焼成キルン(窯)」の熱源をアンモニアに転換する見通しが強まっているからだ。

日本企業が確保を急ぐ2つのアンモニア

他方で、現在原料用アンモニアは、中国やロシア、アメリカなど世界全体で年間約2億トン製造されている。ほとんどが生産国内で消費されているが、2050年には7億6000万トン規模に拡大すると見込まれている。一見、調達は容易そうに見えるが、その大半が、製造時に二酸化炭素を排出する「グレーアンモニア」として生産されている点が問題だ。

もちろん、カーボンニュートラルのために使用するアンモニアは、グレーアンモニアであってはならない。再生可能エネルギーを使って作る電解水素を活用し製造時に二酸化炭素を排出しない「グリーンアンモニア」か、製造時に二酸化炭素を排出するもののそれを回収して貯留するCCS(Carbon dioxide Capture & Storage)付きの「ブルーアンモニア」のいずれかでなければならない。

しかし、今のところ生産量の少ないグリーンアンモニアやブルーアンモニアを必要量調達することは、けっして容易ではない。そのため、日本の電力会社、石油会社や商社は、「グリーンアンモニア」や「ブルーアンモニア」を確保するための動きを強めている。

日本最大の火力発電会社であるJERAおよび大手石油会社の出光興産が世界最大のアンモニアメーカーであるノルウェーのヤラ社との協業を模索したり、総合商社の三井物産がアブダビ国営石油会社(ADNOC)のクリーンアンモニア生産プロジェクトに参画したりしているのが、それである。これらの動きがさらに進展することを期待したい。