実は、イスラエルはロシアにとって、非常に大切な国である。

1948年のイスラエル建国の際にはアメリカやヨーロッパからユダヤ人が移ってきたが、実はいちばん多くのユダヤ人を送り込んだのが、旧ソ連であったのだ。だから、イスラエルでは選挙のたびに、候補者がロシアを訪れて政府高官と握手し、「私はロシアの信用も得ています」とアピールするのが慣例となっているのである。

だから、プーチン氏は今回ウクライナに軍を進めた後、対面で会談する最初の外国首脳に、フランスのエマニュエル・マクロン大統領やドイツのショルツ首相ではなく、あえてイスラエルのベネット首相を選んだのだ。

「側近によるプーチン暗殺」もあり得る

そして、その会談の後、ベネット首相はウクライナのゼレンスキー大統領と電話で会談している。ゼレンスキー氏も同じユダヤ系ということもあって、この二人も元々関係がいいのである。

私は、プーチン氏とベネット氏の会談は、プーチン氏に停戦を促すよう、ゼレンスキー氏が水面下でベネット氏にお願いして実現したのではないかと見ている。そして、ベネット氏の仲介案であれば、ゼレンスキー氏はこれを呑むのではないだろうか。

もうひとつは、プーチン氏が失脚することで、戦争が終結するパターンである。

もしかするとプーチン氏には、冷戦時代に長期独裁政権で権力を私物化した後、1989年の東欧革命で夫人とともに処刑されたルーマニアのニコラエ・チャウシェスク大統領と同じような最期が用意されているかもしれない。

黒のパーカーのフードを被った人の顔は見えない
写真=iStock.com/Phira Phonruewiangphing
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ただ、プーチン氏の場合は、裁判で裁かれて死刑というより、側近による暗殺だろう。

プーチン失脚後、誰がロシアの次の大統領になるのかはわからない。若者は9年間の刑期に服しているアレクセイ・ナワリヌイ氏を支持するかもしれないが、意外にゲンナジー・ジュガーノフ氏(ロシア連邦共産党党首)のような旧ソ連共産党出身者のほうがまだクリーンであるということで年寄りの支持を集める可能性がある。