2022年から、年金の繰り下げ受給が、最長70歳から75歳までに延長された。選択肢が増えたいま、年金は、いつ、どう受け取ればいいのか。ファイナンシャルプランナーの井戸美枝さんが3つのパターンを試算する――。
手に年金手帳を持ち、見つめる女性
写真=iStock.com/west
※写真はイメージです

5年繰り下げで42%、10年で84%増える

年金を増やす方法の1つに、受け取り時期を遅らせる「繰り下げ受給」があります。

年金の支給開始は原則65歳ですが、繰り下げ受給をすると、年金額が1カ月当たり0.7%分多くなります。従来は、繰り下げられるのは70歳まででしたが、2022年4月からは75歳まで繰り下げられるようになりました。

年金のアップ率は…

1カ月繰り下げで0.7%
1年で8.4%
5年で42%
10年で84%

……となります。

共働き夫婦の繰り下げプランを試算

同じ歳の共働き夫婦を例に、繰り下げのプランや効果を試算しました。

<設定条件>
夫 22歳から65歳まで、43年間厚生年金に加入。平均年収43万円
妻 22歳から65歳まで、43年間厚生年金に加入。平均年収35万円

【パターン1】 2人分を65歳から受け取る

まずは繰り下げを選択せず、65歳から受け取る場合です。

繰り下げずに普通に受け取る

65歳から普通に年金を受け取った場合の年金額は、夫が199万4000円、妻が176万8000円で、2人で約376万円です。

65歳以上の夫婦世帯では毎月の支出が平均で27万円程度ですから、年金だけでも毎月の支出はカバーできそうです。共働きの場合、年金もある程度の額になる、ということが分かります。

【パターン2】 妻のみ5年繰り下げ受給する

とはいえ、いずれはどちらかが先に亡くなり、もう一方は「おひとりさま」になります。年金が1人分になっても、生活費が半分になるわけではないので、おひとりさまになると、2人で年金を受け取っていた期間より、余裕がなくなることも考えられます。

そこで、長生きする可能性がある妻の年金を繰り下げによって増やしておくのもいい方法です。

妻のみ老齢基礎年金、老齢厚生年金とも5年繰り下げ

70歳からの年金は夫婦の合計で450万円以上となり、平均的な水準からみれば、生活費としてもかなり余裕があるといえます。また妻の年金は約251万円で、夫死亡後は、遺族年金が11万円程度加わります。

ただし、65~69歳までの5年間の収入は夫の年金の約199万円ですから、この間は夫婦が年金だけで生活するのは難しいといえます。