ご飯と味噌汁を中心とした食事がメンタルに好影響を与える
これらはうつや心的外傷後ストレス障害(PTSD)との関わりなどがあることが知られています。
北海道大学の研究では、40歳以上の健康な男女278人に食事調査を行いました。そして、1カ月にわたり、食事内容とともにメンタルヘルスに関する質問に答えてもらい、解析しました。調査結果によれば、パンや麺類ではメンタルヘルスの指標との関わりは示されませんでしたが、ご飯(米飯)については「生き生きと暮らす」などといった生活の質や、睡眠の質の改善に関わることが観察されました。
さらに、ご飯と味噌汁を組み合わせた食事では、睡眠の質、抑うつ、衝動性の改善との関わりが見られ、心が落ち着いている傾向がありました。ご飯をたくさん食べればいいのではなく、ご飯と味噌汁を中心とした食事が影響を与えていると考えられました。
被験者に40歳以上の人を選んだのは、生活習慣病のリスクが高くなる年齢だからです。調査の結果、米と味噌汁の組み合わせが健康指標と相関が高く、この年代の人たちはそういう食生活で育った人が多いです。このことは、北海道大学の調査を裏付けているかもしれないと考えられました。
日本人の食生活と健康の関わりについて研究している東北大学の研究グループによると、1960年から1990年までの15年ごとの献立調査で、1960年はまだ戦後の色が濃く質素、1990年代になると欧米化が進んでいたと報告されました。その中間の1975年の食事が、適度という結果でした。適度というのはバランスの良い理想的な日本食であるということです。
魚を食べることで認知症リスクの低下が期待される
また動物実験や疫学調査でも1975年の食事が健康的であることが示されました。40歳以上の人はご飯と味噌汁とバランスの良い和のおかずの食事を経験し、いまもその食生活を続けている可能性が高いことから、さらに日本食とメンタルとの関係を調査することになりました。結論として、日本食がメンタルヘルスに貢献している可能性が示されました。
日本食では多様なものが食べられているのが特徴で、ひとつの食材の影響に言及することは難しいのですが、これらの研究では「ご飯と味噌汁」を中心にいろいろなものをバランスよく食べるのが良いという効果的な食べ方が見えてきました。
一つ一つの食材の影響は小さく、いろいろなものを組み合わせて食べるのが重要なようです。ご飯で効果が見られたのは、納豆のように一緒に食べるものや、食事のときに摂る緑茶などの効果も影響していると考えられます。日本人にとっては、ご飯と味噌汁の食事はホッとする、こんな気持ちも脳に影響しているのかもしれません。
また、宮城県大崎市の疫学調査から、日本食を多くとっている人は、認知症の発症が少ないこと、中でも魚を多く食べている人は認知症のリスクが低いことが示されています。いずれにしても食べものと脳の研究はまだ始まったばかりで、今後の展開が待たれます。