技術で負けると、戦い全体で負ける危うさをはらんでいる

日本も18年12月に閣議決定した「防衛計画の大綱」(防衛大綱)で、宇宙、サイバー、電磁波を新領域と位置づけ、「多次元統合防衛力」の構築を正面から掲げた。

グローバル通信ネットワークのイメージ
写真=iStock.com/metamorworks
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宇宙やサイバー、電磁波という新領域では、そこの技術で負けると、戦い全体で負ける危うさをはらんでいる。これらの技術が、民生と軍事の双方で活用できるデュアルユースであることは、これまで説明してきた通りだ。

――近未来の戦争はどのようなものか。

外務省の補助金を受けた調査研究に興味深いものがある。公益財団法人「未来工学研究所」が20年3月にまとめた「技術革新がもたらす安全保障環境の変容と我が国の対応」だ。

報告書は、デュアルユースで、安全保障の将来に大きく影響するものとして、AIなどに加え、以下を挙げている。

前線には3Dプリンターが配備、兵士は夜間でも見える目を手に入れる…

付加製造技術 前線に配備された3Dプリンターが弾薬や予備部品、食料、医薬品などをその場でプリントする。いちいち前線まで送り届ける必要はなくなる。工兵も、兵舎や橋を建設するのではなく、プリントできるようになる。

ロボット工学 ドローン、無人潜航艇、無人車両の活用がさらに進み、人が乗る有人兵器を置き換えていく。有人兵器よりも長時間、長距離にわたって行動することができる。人間を危険にさらさないため、偵察や攻撃に既に広く活用されている。今後は、輸送、補給、空中給油、傷病兵の回収などさらに幅広い分野に進出するだろう。

生物工学 遺伝子情報操作や化学物質によって兵士の肉体的能力や認知能力などを拡張し、筋力や持久力を通常の人間よりもはるかに高め、夜間でも目が見えるといった能力を与えられるようになる。合成生物学によって、感染性や毒性の強い生物兵器や、敵の兵器やそれらを動かす燃料を分解してしまう生物兵器が出現する。現在の医療技術では救えない重傷者の命を救ったり、負傷で失った部位を復元したりできるようになる。

エネルギー技術 高エネルギー密度の電池によって兵士の身体能力を補助する強化外骨格(パワード・エクソスケルトン)が普及するとともに、無人兵器や通常動力型潜水艦の行動半径が大幅に拡大する。レーザーや粒子ビームといった大出力指向性エネルギー兵器が実現し、弾道ミサイル防衛システムや防空システムのあり方が大きく変わる。