予期せぬ妨害者の存在
そんな話があるなら、私が恨まれるのも無理もない。私は事実関係を確認するべく、すぐに不動産屋に電話を入れた。すると不動産屋の社長は「そんなことあるわけがない!」と怒りはじめた。
「私は、前の持ち主もよく知っているよ。そこに住んでいたおじいさんなら、東京の息子さんのところで今も元気に生きてるよ。誰がそんなおかしなことを言ったの⁉」
夫婦が再訪問した際に会ったという隣のおばあさんのことを告げると、「なるほどね。毎回、あの土地が決まりそうで決まらないのはそういうことだったか」と納得した様子を見せた。後日、不動産屋の社長は電話で事情を教えてくれた。
「あのばあさん、自分ちの隣に家を建てられるのが嫌だったみたいなんだ。隣が空き地なのをいいことに自分の土地からはみ出して家庭菜園なんか作りやがって。隣に家を建てられたら、せっかく作ったのが潰されると思って、見に来る人にヘンな話を吹き込んでいたんだよ。とりあえず正直に話したし、ばあさんも謝っていたから許してやるわ。『もう二度とそんな話するんじゃないよ』ってきつく言い聞かせておいたから、もう大丈夫だよ」
その話を聞いてほっとするのと同時に、営業マンの性が燃え出した。宇野さん夫妻に事情を説明すれば、まだ契約できる可能性があるのではないか。私は事情説明するとアポイントを取り、再び宇野さん宅を訪れた。事実をすべて伝え、これなら問題ないのではないかと、あの土地を勧めてみた。
宇野さん夫妻は顔をしかめて、「屋敷さんに悪意がなかったのと、あの土地が事故物件じゃないのもよくわかりました。でも、隣にそんな人が住んでるのはもっと嫌です」とのお返事。まぁ、そりゃそうだ。そんな変人が住んでいる土地を平気で勧める私もどうかしている。