——『堅あげポテト』のブランドはどう育ったのでしょうか。
ブランドで重要なのは、商品のコンセプトですが、これを決めるのにも時間がかかりました。発売当初は通常のポテトチップスで人気の味を堅あげポテトで色々と試しましたが、売れないんですよ。様々な味を出してしまうことで「堅あげ」の評価ではなくて、「味」の評価になってしまっていると思いました。まずは、「堅あげ」とはどんな特徴の商品かを知ってもらい、「堅あげ」の認知度を上げることがブランドとして重要と考え、うすしお味一本で勝負することにしました。これがある程度成功して、次に酒のつまみの需要を考えて、ブラックペッパー味を出しました。マーケット調査の結果、98年に、この商品の価値は「噛むほどうまい」ということが明確化でき、味はうすしお味とブラックペッパーの二つに決まりました。今では堅あげポテトも様々な味がありますが、10年くらいはうすしお味とブラックペッパー味の二つだけで売り続けていました。マーケティングや生産設備の検討、原料の確保とか色んな役割の方々のお蔭で、ブランドが育った感じですね。
——カルビーに入社したきっかけは? ポテトチップスの開発をしたかったのでしょうか。
大学が農学部で、食品に携わる仕事はしたいと漠然と考えていました。企業と取引する仕事よりも、直接お客様の反応が見られる仕事のほうが楽しそうだなと思っていました。我々の時代は企業研究はそんなにやらなかったので、今ほど情報があったわけではないですが、カルビーは原料でジャガイモを扱っているイメージがあって、「質実剛健さ」のような雰囲気が魅力的に映ったんだと思います。泥臭い、土臭い感じですね。チョコとかおしゃれな感じのお菓子をつくっている会社じゃないところが、いいなと思ったところです(笑)。当時は「ポテトチップスをつくろう」とか、「お菓子をつくりたい」といった具体的なことは考えてなかったです。