竹内まりやの非公式動画が2000万回以上再生

YouTubeでの日本のシティポップのブレイクということでいえば、竹内まりやの「プラスティック・ラヴ」に関する経緯はもはや説明不要だろう。2017年ごろに非公式にYouTubeでアップされた動画が、あっという間にSNS上で拡散され、一気に2000万回以上の再生数をたたき出した。

この状況を受けて、2019年には急遽きゅうきょ公式のミュージックビデオが制作されている。

また、インドネシアのシンガーで人気音楽YouTuberでもあるRainych(レイニッチ)が2020年10月に松原みきの往年のヒット曲「真夜中のドア/STAY WITH ME」(1979年)をカヴァーしたことがきっかけで、Apple MusicやSpotifyといった音楽ストリーミングサービスの各種チャートでのランキングが急上昇。日本だけなく全世界でチャートに入るという40年越しの特大ヒットとなった。

海外で評価されている日本の70~80年代の音楽

竹内まりやや松原みきのブームの少し前には、大貫妙子の1977年のアルバム『SUNSHOWER』の再評価という現象もあった。

2014年に放映された人気バラエティ番組「Youは何しに日本へ?」に、このアルバムを探すために日本にやってきたアメリカ人教師が登場。

店内のレコードを探す人の手元
写真=iStock.com/Liudmila Chernetska
※写真はイメージです

この時点ですでに彼のような外国人が大貫妙子のレコードを血眼になって探していたということは、さらにその数年前にはすでに海外の再評価が進んでいたことがわかる。

海外には、大貫妙子に限らず日本の70年代や80年代の音源に注目する音楽ファンがたくさんいる。たまたまテレビ番組にフィーチャーされ可視化されたというだけで、潜在的に日本の音楽を好む海外のリスナーの総数は膨大数になるだろう。

人気の出た楽曲が、たまたま日本語だった

海外における日本文化の評価という軸で考えると、アニメおよびアニソンはもはや定番だ。かなりマニアックなアニメでも、海外には一定のファンがついており、日本語で歌われているアニソンを自然に聴いているという例も決して少なくはない。

それがたまたま日本語だったというだけで、英語だろうがほかの言語だろうがアニソンとして区別はされていないのだ。こういった日本文化における受け入れられ方は、そのまま日本のシティポップにも当てはめられることも多いはずだ。

70年代や80年代の心地よい音楽を探しているうちに、たまたま知られざる日本のシティポップという鉱脈に遭遇し、さらにはSNSなどで拡散されたものをキャッチし、リスナーの耳に馴染なじんでいったことは、今のインターネットカルチャーがデフォルトになった時代では当然といってもいいのかもしれない。