大前 日本は1991年をピークに税収が下がり続けてきて、この20年で、なんと約25%も税収が減っている。高度経済成長を終えた成熟期の時代に、税収は増えません。税収を増やすには税率を上げるしかありませんが、今の経済状況でたとえ今までと同じやり方で税率を上げても、国民経済は必ず地下に潜ってしまうでしょう。

大前研一●ビジネス・ブレークスルー大学学長。1943年福岡県生まれ。早稲田大学理工学部卒業。東京工業大学大学院修士課程修了。MIT工科大学大学院博士課程修了。工学博士。最新著『訣別 大前研一の新・国家戦略論』(朝日新聞出版)は「大阪都構想」の理論書でもある。

成長期には法人税や所得税というフローにかける税制には意味がありましたが、それが完全に行き詰まっている状況です。政府が小数点の世界で、いくら税率をいじくったところで税収は増えない。成長期から成熟期の税制へ、フローからストックへと税制をシフトするべきだというのが私の考え方です。つまり安定したストックにかける「資産税」と、生産から流通までのあらゆる段階で生み出された“付加価値”に対してかける「付加価値税」です。統治機構の抜本的な改革とそれに合致した税制改革が日本の再生に不可欠であることを、是非、大阪都で実証してほしい。

橋下 先生の『心理経済学』(講談社)も拝読させていただいていますが、資産税にすれば溜め込んだ資産に課税されるわけですから、資産を使わねば、という方向に国民心理が動き、皆がお金を使ってものが動くようになるので付加価値税も取れる。成長期そのままの税制で、所得税や法人税でガサッと取っていたら、皆、勤労意欲を失くしてしまいます。