今年のNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」では、北条義時の初恋の相手として「八重」という女性が登場する。歴史学者の濱田浩一郎さんは「源頼朝の最初の妻だったことは確かだが、義時とは面識があったことすら怪しい。史実としては2人の恋愛関係は確認できない」という――。
北条義時の初恋の相手となっている八重はどんな人物だったか
今年の大河ドラマ「鎌倉殿の13人」の主人公は、平安時代末から鎌倉時代初期の武将・北条義時である。
ドラマでは、義時(小栗旬)の初恋の相手として、八重(新垣結衣)という女性が登場する。しかし、八重は、本当に義時と恋愛関係にあったのだろうか。そして、八重とはどのような女性だったのか。当時を描いた史料を基にみていきたい。
監視対象の源頼朝と恋に落ちる
八重の父親は、伊豆国伊東荘の豪族・伊東祐親とされている。
同国の豪族には、北条義時の父・時政もいたが、その勢力は伊東氏のほうが断然大きかった。当時の北条氏の動員兵力が「三十騎から五十騎」程度であるのに対し、伊東氏は「三百余騎」(鎌倉時代の歴史書『吾妻鏡』)を率いることができたのを見ても、そのことが分かろう。
伊東氏は平家に信頼されていた家人であった。それゆえ、思わぬ人物の監視を任されることになる。それが、平治の乱(1159年)に敗れ、伊豆に配流された源頼朝であった。
鎌倉時代末の軍記物語『曾我物語』によると、当時、伊東祐親には娘は4人いたという。
1人は三浦義澄の妻となった女性。2人は、土肥遠平(相模国の住人・土肥実平の子)の妻。3人目と4人目の娘はいまだ祐親の元にあった。
4人の娘のなかでも、三女は美女として著名であったそうだ。この三女(一説には四女)と源頼朝とが恋愛関係となり、日が経つうちに、男子が誕生。頼朝は大いに喜んで、男子の名を「千鶴御前」(千鶴丸)と付けたと言われる。
実際の名前は、はっきりとわかっていない
頼朝の最初の妻となったこの女性の名前は、ドラマでは八重となっている。だが、実際の名前は、はっきりわかっていない。