2019年ごろには侵攻を計画していたか
そもそも金は金利が付かないことから投資商品として妙味は乏しいはずなのだが、なぜ、これほど金価格が世界的に高騰したのか。当時は「米中の貿易戦争に起因する世界経済の不透明感が高まるなど、経済の先行きが不安視される中、安全資産として金に需要が高まった」(大手商社)と説明された。
だが、その裏で進んでいたのは世界の中央銀行による金の購入だった。19年上期の中央銀行による金の買い増しは374トン(約170億ドル)に達した。金・ドル兌換制度が廃止された1971年以降最高だった18年を上回る水準。とくに目立ったのはロシアや新興国の中央銀行の買いだった。このロシア中銀による金購入は、米ドル依存からの脱却を目指すプーチン大統領の指示と見られた。
ロシアは金産出国で、輸出国でもあるが、2018年にはロシア中銀の金購入量は国内産出量を上回り、以降増加していった。22年1月の外貨と金の保有は過去最高の6300億ドル(約74兆円)。世界4番目の外貨準備額高に達している。これに伴いロシアがドル建てで保有する外貨の比率は5年前の40%から約16%へと比重が低下している。プーチン氏の念頭には、すでにこの時点からウクライナ侵攻があったとみていい。
しかし、実際の侵攻に伴う欧米の反発は予想を超えた。戦闘は長期化し、経済・金融制裁は厳しさを増していった。侵攻を境に通貨ルーブルも急落した。
100年たち、再びデフォルトの危機を迎えている
ロシア財務省は4月6日、4日に償還期限を迎えたドル建て国債21億ドル(約2580億円)について、自国通貨ルーブルで支払い手続きを行ったと発表した。米財務省が経済制裁としてロシア中銀の外貨準備から米金融機関を通じて支払うことを認めなかったことへの対抗措置だが、ドル建て国債を他国通貨で償還することは契約違反。格付け会社は、部分的なデフォルトと見なす「SD(選択デフォルト)」に引き下げ、格付けの付与そのものを取り下げた。
ロシアは事実上、国債発行を通じた外貨調達の道を閉ざされたに等しい。救済措置として30日以内に契約通りドル支払いに切り替えればデフォルト認定は取り消せるが、ロシアにその意思はないだろう。