ロシアのデフォルトは時間の問題か
欧米諸国による金融、経済制裁によってロシア経済の悪化が鮮明だ。ウクライナ危機が発生するまで、ロシアは基本的に自国の原油や天然ガスなどの資源を輸出することで経済を成長させてきた。そのため、ロシア国内では、軽工業やサービス業の分野で企業は育っていない。
欧米諸国の厳しい制裁、中でも中央銀行への制裁などによってロシアの米ドル資金は枯渇し、デフォルト(債務の不履行、当初の約束通りに利払いや元本の返済がなされないこと)は時間の問題になっている。外資企業の撤退も増えている。経済と金融システムが混乱し、ロシアの経済成長率が急速かつ大幅に低下することは避けられない。
ウクライナ侵攻についても、キーウ(キエフ)近郊でロシア軍による民間人の殺害の疑いが浮上したことによって制裁は強化され、そのリスクは高まった。今後、懸念されるのは、追い詰められたプーチン大統領が、欧州向け天然ガスのパイプライン“ノルドストリーム1”を停止することも懸念される。
その場合、世界経済にはかなりの悪影響が生じる。供給制約はいっそう強まり、経済成長率の低下と物価上昇の同時進行が鮮明化するだろう。それ以外にも、ロシアが報復措置を実行する可能性が高い。ウクライナ危機が世界経済のゲームチェンジャーであることは冷静に考える必要がある。
新しい需要を生み出しづらい産業構造
ロシア経済にはいくつかの特徴がある。まず、ロシアは世界有数の資源国だ。ロシアは地中から掘り出される天然ガスなどのエネルギー資源や、農地で収穫される小麦などの穀物を輸出して米ドルなどの外貨を獲得した。手に入れた外貨を用いてロシアは経済運営に必要な機械や資材を輸入した。2020年の輸出の51.3%が鉱物製品、8.8%が食料・農産品(繊維除く)だ。輸入の47.6%は機械や輸送機器、18.3%が化学製品だった。
次に、製造業とサービス業の育成が十分ではないと考えられる。理論的に、経済の発展は第1次産業(農林水産業)、第2次産業(建築や製造業)、第3次産業(サービス業)の順に進む。特に、製造業の成長は、新しいモノの創造を通して人々の新しい生き方を可能にする。それがサービス業の育成に欠かせない。輸出入のデータを見る限り、ロシアは自律的かつ持続的に新しい需要を生み出し、人々の満足感を高めるための産業構造を整備することが難しいようだ。